銀河覇権戦争へ発進(PC Sins of a Solar Empire:Rebellion)

  • 銀河系大艦隊戦RTS(リアルタイムシュミレーション) 日本語版PCゲーム

3種族6グループ(各種族はさらに体制派と反体制派に分かれている)の中から、1グループを選択して広大な銀河惑星群の争奪を争う銀河覇権戦争RTSゲームである。

絶大な破壊力と驚異の能力を兵装したタイタン級宇宙戦艦(1グループ1隻しか保有できない)を旗艦、各種得意担任能力を備えた主力艦数隻を主力とする連合艦隊を投入して、防備の薄い敵惑星を攻撃占領する。
動画 コロナタ・タイタンを旗艦とする主力部隊(紫軍)が敵(青軍)惑星デュルケームを攻撃する

  • タイタンと主力艦、それと中・小型艦

タイタンと主力艦はレベル10まで成長する。成長に伴ない耐久力や破壊力、特殊能力が増加する。
各グループのタイタン(計6隻)はそれぞれ特有の能力がある。

<タイタン>

各種族のタイタンは、TECではアンキロン(体制派)とラグナロフ(反体制派)、アドヴェントではコロナ(体制派)とエラディカ(反体制派)、そしてヴァサリではヴォラストラ(体制派)とクルトラスク(反体制派)である。

一時的に敵惑星を占領する、敵艦のパワーを吸い取りそのパワーを自艦に流し込む、射程の長いレールガンで広範囲の敵艦にダメージを与える、マイクロフェーズジャンプを発動して逃げ去ろうとする敵艦隊に一瞬で接近し撃滅する等、多彩でユニークだ。

動画一覧 タイタンの怒り
1.アンキロンタイタン:
2.ラグナロフタイタン:
3.コロナタイタン: 3-1.デュルケーム攻略
4.エラディカタイタン:
5.ヴォラストラタイタン:
6.クルトラスクタイタン:

<主力艦>

主力艦は6種類。戦艦、空母、惑星占領艦、惑星爆撃艦(占領目標の惑星の防備を破壊)、支援艦(敵艦の装甲強度を減少させたり、僚艦の船体ポイントを回復させる等)。
中・小型艦は軽空母、近距離や遠距離攻撃を得意とする艦、施設(宇宙基地、砲台、研究所等)攻撃を専門とする艦、特殊機雷敷設艦等がある。

  • 開発カードと研究所建設

中・小型艦船やタイタン建造、また攻撃兵器開発や装甲強化、船体修復システム増強等は必要な開発カードを起動しなければ始まらない。開発開始はカードをクリックするだけ。
操作はスクリーン上部中央の「研究マーク」①をクリック、すると「研究」アイコンが並んだプルダウンメニューが表示されるので、一番上の「軍事」アイコン②をクリックすると軍事関連「開発カード」の一覧が表示される。左から右にいくほど高度な開発カードになる。但し「軍事研究所」と「クレジット」、「金属」、「クリスタル」が必要な数だけなければならない。
タイタンを建造するためには図の下段にある4つの開発カードを起動したあと、「タイタン建造所」を占領惑星に建設し、「研究」アイコンの「艦隊維持」アイコン③をクリックして主力艦乗員レベル数④が「2」になるように艦隊維持カードを開発して、ようやくタイタンを建造できる。そのためには惑星を多く占領しておかなければならない。

研究には「軍事」の他に「防衛」、「社会学」等の開発カード図がある。これはTEC種族特有の呼び方で他の種族は呼び方が違うが、おおよそ「防衛」=占領宇宙域の防備関連(宇宙基地機能など)開発カード群、「社会学」=火山惑星、氷惑星、地球型惑星などの開発を可能にするカード、宇宙貿易港、敵動向感知センサーなどの開発カード群などに分かれる。軍事・防衛の開発には「軍事研究所」の数が関係し、社会学の開発には「社会学研究所」の数が関連する。

  • 宇宙基地は占領惑星防御の要

宇宙基地の攻撃力は主力艦とタイタンの中間ぐらい。戦闘経験値の獲得で成長はしない。「軍事研究所」と「クレジット」、「金属」、「クリスタル」が必要な数だけあればいくらでも増強可能だ。また貿易港設置や空母能力付与、遠くの敵惑星からの自軍惑星を狙った戦略砲撃後の緩和防御、中・小型艦造船所の設置など占領惑星の防御の要である。運用によっては敵惑星占領作戦に随伴し主力艦船とともに攻撃に参戦することも可能だ。

ヴァサリの宇宙基地は可動で敵を追撃できる。TECとアドヴェントは位置固定式だが「双子の宇宙基地」(1つの惑星域に2つ並べて建設できる)機能や流星雨攻撃機能などユニークな特殊能力を持っている。

宇宙基地建設は中・小型艦造船所の宇宙基地建設艦を建造して要所に誘導して建造開始を指示する。

<宇宙基地>

  • ワームホール移動、洗脳寝返り放送センター、遠距離惑星間爆撃砲

通常、艦隊は惑星と惑星を結ぶ星間レーンを辿って移動する。TECとアドヴェントは開発カードを起動していれば、途中にワームホールを利用するワームホール間通行が可能になる。ヴァサリはもっと進んでいて、必要とする場所にフェーズ・スタビライザーを建設し、別の場所に設置してあるフェーズ・スタビライザーのある場所へ直接フェーズジャンプが可能だ。

TECは恒星間ネットワーク、ヴァサリはメディアセンター、アドヴェントは親交の聖堂を建設できる。それを強化していくとプロパガンダの拡散や洗脳教化の布教が強まる。武力での占領攻撃をしなくてもいつのまにか敵惑星を自軍惑星にしたり暴動勃発で中立惑星にしたりできる。自軍も武力開発一辺倒だけではいけない。洗脳や反乱扇動に対抗して同様の施設建設や強化政策カードを起動しておく必要がある。

惑星間爆撃は爆撃砲を建造後、稼働ONすれば自動的に敵惑星を選択して爆撃してくれる。大爆音と大閃光に惑星が包まれて惑星都市が壊滅する。爆撃された惑星に防護措置がなければ一瞬で中立惑星となり、クレジット税収が途絶え忠誠度がゼロとなる。それまで惑星開発に投じたコストや努力が水の泡となる。建造所も無力化されるので艦船や防衛砲台も建造できなくなる。敵占領艦隊が来襲したり、敵の洗脳放送などが強力であれば短時間で占領される。

その防護のためには惑星シールド装置の開発と建設、惑星における非常用施設レベルアップ、宇宙基地内に設置できる補助政府機能の開発などを事前準備しておかなければならない。

<惑星間爆撃砲>

  • MAPは豊富で編集も可能、チュートリアルも親切、PC環境は注意

MAPは大MAP(惑星数:約50-150)、中MAP(惑星数:約30-100)、小MAP(惑星数:約10-30)くらいで各MAP約30くらいあるので、計100MAPぐらいあるので十分だろう。難度も初級、中級、上級、最強、屈強と変えられる。チュートリアルでゲーム操作の感触を確かめた後、小MAPの初級で楽しめばいい。

敵や惑星が増えて映像やゲーム処理が遅くなったりしてきたら、「オプション」→「インターフェース」をクリックして表示項目を減らしPCへの負荷を下げる手もある。

 

ドニは無敵(FE覚醒 3DS)

  • ファイヤーエムブレム「覚醒」3DS

ターン制シュミレーションRPGゲーム。20数年前、ファミコンでデビューして以来、人気シリーズが続く。剣と魔法が支配する世界で主人公と仲間ユニットが成長しクラス・チェンジしながらキャンペーンを進めていく。

FE(ファイヤーエムブレム)の魅力は、敵を倒す毎に経験値を獲得し次第に上級の魔法や武器が使えるようになり、様々なスキル(2度攻撃、先制攻撃など)を獲得していくユニットの成長だ。だが苦労して育てたユニットも敵に倒されるとそこでサヨナラ。死んだユニットは復活できないという理不尽さが、育て上げたユニットへの思い入れを一層増すことになる。

さてドニの初期兵種は村人。絵では木製槍にヘルメット代わりの鍋という貧乏と貧相のダブルパンチ・キャラだ。

使い物にならないと思ったが母親のたっての願いなのでメンバーに入れてみた。試しに使ってみようじゃないかという優しいクロム王子やフレデリク副長らメイン・キャラの温情で外伝MAPで使ってみた。フレデリクらが敵のHPを5〜6に削り、「さあドニ、倒してみろ」と経験値稼ぎを譲った。「みんな優しいんだなあ。オイラ感激だ。ヨーシ!」と挑んだが、倒せない。敵のターンになると確実にドニはやられる。攻撃が残っていた仲間が慌てて駆けつけてその敵を倒した。不甲斐ないドニを前に皆がこりゃダメだと頭を垂れ首を振る。1回や2回の失敗は誰にでもある、もう少し長い目で見てやろうじゃないかと全員がため息まじりに納得した。田舎者だからしょうがないとは誰も言わない。

そこでこのままでは戦力にならないので、ドーピングをしようということになった。ステータスをその戦闘時だけブーストできるアイテムを、交戦開始前にドニにタップリもたせるのだ。力の薬、HPの薬、速さの薬など。その努力の甲斐あってやっと敵を倒し経験値が上がりレベルが上がった。するとほとんどのステータスがポコポコと上がった。次のレベルアップ時も同じくほとんどのステータスが上がった。仲間のキャラたちが一斉に驚きの声をあげた。皆、「ひょっとしたらコイツは大化けするかもしれない」と感じたからだ。

レベル10になったのですぐにチェンジプルフを渡し、村人→戦士にチェンジアップさせた。青銅の斧を渡しメイン・キャラと同じ活躍の場を与え、ドニもその付託に応えた。仲間もわりとやるじゃないか、と頼もしく思い始めた。だが戦士レベル20となる頃には他のメイン・キャラを遥かに上回るキャラに成長した。
守備力が高く、破壊的な斧の打撃、スルッと敵の攻撃をかわし、たまに魔法攻撃、槍、剣、弓矢が当たってもカスリ傷程度。ステータス上限があるのでマスタープルフを渡し、戦士→ウォーリアにチェッジアップ。銀の斧と青銅の弓を装備させる。ところが最弱の青銅の弓であっても簡単に敵のボス・キャラを一発で倒し始めた。
そして倒した後のセリフが口癖の「助かったあー」。
このイヤミなセリフには敵だけでなく味方でさえ鼻白む思いだ。「どこにも危なかったとこなんかねえじゃないか。皮肉言ってんじゃねえよ。この田舎者が」と(面と向かっては誰も言わない)。だがドニは天然、悪気はない。イヤミをいう性格でもない。単なる口癖なのだ。最強ダントツのエースのウォーリアになっても鍋のヘルメット姿で出陣するのだ。
一番割りをくったのが気取り屋でお調子者でナンパ好きのヴィオール。

苦労してスナイパーにまで成長し弓は俺に任せろと大口を叩いていたが、ドニの一撃必殺の弓の出現で出番がなくなった。
ゲーム終盤に近いが各兵種クラス代表とのステータス比較表は次のとおり。

●ドニは最強か?
ファイヤーエムブレムの歴史上で、古(いにしえ)に勇名を轟かした勇者オグマと狂戦士バーツを思い出す。
しかし剣技の達人オグマも魔法攻撃には弱かった。パラディンの槍も苦手だった。アーマーナイト並みの守備力と強力な戦斧を振り回す切り込み隊長バーツも技と幸運がイマイチだった。斧を振っても敵に当たらなければやがて返り討ちに。最凶最強のデビルアクスを持たせれば幸運が低いと自分の首に当ててしまうお粗末。
ではドニに匹敵、または凌駕するキャラはいるのか?
いる!たぶん次の2人は資格十分だ。
ダースベーダの生まれ変わりのような「漆黒の騎士」と「狂王・アシュナード」。
漆黒の騎士は軽く剣を振るだけで相手を倒す。多分軽い剣の振りにみえるが実際は音速を何倍も超える速さのため剣先から殺人的なソニックブームがでているのだろう。
狂王・アシュナードはとにかく倒すのに一苦労だった。

    「Radiation」を「新鮮」と訳すのはいかがなものか(アメリカンホラーストーリー)

    2016年7月9日からFOXチャンネルで始まった12話完結の海外TVシリーズ「アメリカン・ホラー・ストーリー:ホテル」。レディー・ガガ主演のエッジの利いたスタイリシュ・ホラー。映画「シャイニング」の雰囲気に凶暴な猟奇シーン、SEXシーンを満載したドラマで、ガガはゴールデン・グローブ賞女優賞を獲得。

    このドラマについて、あるサイトで気になる書き込みがあったので確認することにしてみた。HDDレコーダーにまだ残っていたので第1話「危険なチェックイン」から観ることにした。すると第1話後半にその問題の場面が出てきた。

    ロス市警の刑事ジョン・ロウ(ウェス・ベントリー)が娘スカーレット(シュリー・クルックス)と寿司店で夕食をとっていた。(以下「」内は日本語字幕、<>内は英語の発音)

    スカーレット「これって日本のお魚?」<Shouldn’t we ask if any of this fish is from Japan?>
    ジョン「なぜ?」<Why?>
    スカーレット「新鮮?」(彼女は英語でハッキリと<Radiation(放射能)>と発音)
    ジョン「ママに似てきた」(苦笑いしながら)
    スカーレット「用心しなきゃ」

    つまり日本語字幕だけでストーリーを追っていくと、日本から輸入した魚なので客の口に入るまで時間がかかっている。娘は新鮮かどうかが気になる。父親は母親の食に対する心配性を娘の中に見いだして苦笑い。娘は用心は必要よと父親に返す。

    また同サイトでは「Radiation」は「発光」という意味で、寿司の「こはだ」や「あじ」などの「ひかりもの」を意味しているのだという強引な意訳意見もあった。「放射能」という意味ではないという意見だ。だがそれは無理筋というもの。ドラマの映像の寿司店で出されたメニューを見ると、「ひかりもの」は無い。赤身1貫、白身2貫、小エビ4貫、そして巻き5〜6巻だ。

    メニューから父娘のセリフが成り立たなくなる。

    「これって日本のお魚?」→「なぜ?」→「ひかりもの?(Radiation)」ここで会話が変わる。「おいおい、スカーレット。ひかりものなんか出てないじゃないか。お前の好きなものばかりのはずだよ」

    • おませで賢いスカーレットはFDAの「輸入アラート99-33」をWebで知っていた!?

    この会話の原因となったであろう元を探ってみよう。
    まず日本の農林水産省のHPに「米国による日本産食品の輸入規制について」というタイトルのページがある。

    上記①のPDFの一部を抜粋してみよう。
    米国FDA(アメリカ食品医薬品局)の「輸入アラート99-33」に基づく最新(2016年8月26日付け)の輸入停止品目が出ている。

    次に上記②の外部リンクをクリックしてみよう。
    すると米国保健福祉省HHSの下部組織であるFDAが出した「輸入アラート99-33:Import Alert99-33」の原文が表示される。
    公表日(Published Date)は2016年8月26日。
    輸入アラート名(99-33)は、
    「Detention Without Physical Examination of Products from Japan Due to Radionuclide Contamination」

    =「放射性核種汚染のため、理学的検査をする必要のない日本製品の阻止

    Webリテラシーの進んでいる米国。食の安全に人一倍気をつかう母親の姿をそばで見ていて、おしゃまで好奇心の強いスカーレットがその理由をWebで探し「輸入アラート99-33」を探り当て、おりこうさんブリを父親にアピールしたかったとも考えられる。

    テッドとコスモスとSFドラメディと

    映画「テッド」、そしてその続編「テッド2」。ご覧になったあなたの評価は?

    下品すぎる?、面白い?、セックスやマリファナなどを軽々しく扱いすぎている?、ブラックなシーンやセリフをうまくコミカルに処理している?、「お前はどうなんだ、管理人」、「私の評価? いいね!」

    科学啓蒙TV番組「コスモス」は、有名なカール・セーガンがホスト役で登場し1980年に放送され世界的な大ヒット作となった。この続編が34年ぶりにナショナル ジオグラフィック チャンネルで作製され放映された。ご覧になられた方も多いと思うが、新ホスト役は天体物理学者のニール・ドグラース・タイソン博士。博士はNYにある米・自然史博物館に併設されているヘイデン・プラネタリウムの所長である。ご存知のようにこの博物館は世界最大規模で映画「ナイト・ミュージアム」の舞台にもなったところだ。博士はナショナル ジオグラフィック チャンネルの「スター・トーク」という番組でもホスト役をしている。この番組はヘイデン・プラネタリウムに毎回多種多彩なゲストを呼んで、「ポップカルチャーを科学する」という名目で軽妙で楽しいトークを放送している。

    テッド」と「コスモス」とくれば勘の良い人は「セス・マクファーレンだな」と気づいただろう。そう、マクファーレンは「テッド」の監督・脚本・製作を手がけた人物。また新「コスモス」の共同制作者の1人でもある。番組「スター・トーク:アニメの科学」の中でマクファーレンをゲストに呼び録画対談をしている。受け答えのうまさや絶妙のユーモアを聞いていると非常に頭のいい才人だと思う。今後のハリウッド人の注目株だ。

    • 新「コスモス」のホスト役決定の裏側。

    この番組で新「コスモス」のホスト役に自身が抜擢された経緯をタイソン博士が次のように語っている。

    全米科学アカデミー(NAS:全米の科学、技術、医学の3大・学術分野の内の科学分野で最高峰に位置する学術機関)が科学啓蒙促進を目的にハリウッドと提携するためLAに支部を立ち上げた。その初会合にタイソン博士が出かけるとマクファーレンも来ていた。初対面だったが彼の作品を知っていた博士が声をかけると「近々ランチでも」と返してきた。その時は博士もハリウッド流の社交辞令と思い気にもかけなかったそうだ。ところが数か月後にマクファーレンから電話があり、「近くにいるからランチを」と誘われた。思いがけない誘いにとまどいながらも「OK!予定はガラ空きさ」と返答してしまった。何を話そうかとあれこれ迷いながら博士はランチに出かけた。すると逆にランチのあいだ中、博士はマクファーレンの宇宙についての質問攻めに遭うはめになった。「ビッグバンはいつ?温度は?爆発の痕跡は残っている?」等々。まるで宇宙論を学ぶ学生のようで、よほど宇宙が好きなんだなと博士は思ったそうだ。そして半年後、その時に話したことが新「コスモス」のエピソードの1つになっていたそうだ。

    タイソン博士(宇宙物理学)は2005年8月にドナルド・ゴールドスミス博士(天文学)との共著で「宇宙 起源をめぐる140億年の旅」という最新の宇宙科学に関する解説書を著している。読みやすくユーモアあふれる内容だ。この本の帯にはミチオ・カク博士(NY市立大学シティーカレッジの物理学教授)の賛辞のほかに、パブリッシャーズ・ウィークリー誌の賛辞にこうある、「20年以上前にでたカール・セーガンの「コスモス」以来、本書ほど最新の知見にあふれ、とっつきやすく、読んで愉しい一般向けの宇宙論書はなかった」とある。

    タイソン博士は新「コスモス」番組のホスト役に抜擢されるとは思っていなかったようだが、マクファーレンの方はホスト役を誰にするか。専門知識があり分かり易く説明でき、しかもユーモアがあって親しみやすい人物を探していたのだろう。本著の訳者あとがきをみると、博士は既に合衆国の宇宙政策を諮問する大統領委員会のメンバーであることや、芸能雑誌上で「存命中の最もセクシーな宇宙物理学者」にも選出されていた。マクファーレンもその辺の調査をした上で、専門分野と一般視聴者とのかけ橋役の最有力候補として絞り込んでランチに誘ったのではないかと想像する。

    • 才人セス・マクファーレンの傑作「ファミリー・ガイ」。

    番組「スター・トーク:アニメの科学」の中で、マクファーレンが手がけた過激ギャグアニメ「ファミリー・ガイ」の何本かが紹介されている。すごく面白いのだが、人によっては過激すぎるかもしれない。「テッド」に通じる笑いがあるのでぜひ観てみたいと思い海外TV放送チャネル探してみたが、放送しているチャネルはなさそうだった。

    このアニメに出てくる性悪で高い知能を持つ赤ん坊ステューウイー(映像的には3、4才児に見える)と、人間のように立ち振る舞いをして人語を流暢に話す犬ブライアンとが、かなり高度な科学ネタのギャグを展開する。ギャグに感心したタイソン博士はマクファーレンにアイデアの源泉について聞いてみた。彼は小さい頃、科学の成績は良くなかったが科学に興味を持ち、「ファミリー・ガイ」の原型は美術大学時代に作っていたようだ。

    番組で放送されたアニメを紹介してみよう。例えば過去に戻り過去のブライアンに悪さをしようとするステューウイー。それを察知したブライアンが阻止しようと争っているうちに時空移動装置が壊れてしまい、時空連続体の外に放り出されてしまう話。さわりだけなのでどうやって元の世界に帰ったのかが気になる。別の話では「新スタートレック:ネクスト・ジェネレーション(TNG)」の俳優たちを呼び出す転送装置を作ったステューウイー。声優はすべてTNGに出演した本物の俳優が吹き替えをしている。ピカード艦長役のパトリック・スチュワートが「ここはどこだ?」と強制転送に不機嫌そう。呼び出したとたんに断わりもなく発言したという理由で保安部長ターシャ役のデニーズ・クロスビーはステューウイーに光線銃で殺されてしまう。撮影現場の状況を嬉々として質問するステューウイーにクリンゴン人保安部長役マイケル・ドーンが「撮影は楽しかったがパトリックが目立ちすぎだ」とこぼす。「15年も経つのにまだ反抗するのか」とスチュワートが呆れる。「ウーピーとヤった?」というステューウイーの質問に「飽きるほど」と答えるスチュワート。真面目な声音でここまで言うかと大笑いだ。

    そして笑うよりうーんと呻ってしまった話がある。ステューウイーが犬のブライアンを小馬鹿にしたように言う「多元宇宙を知ってる?」。「当然さ 君こそ知ってるのか」とブライアンが言い返す。見え透いた嘘を言うなと言い争いになる。

    そしてステューウイーが見せてやるよと手に持った多元宇宙移動携帯装置のスイッチを押す。2人(正確には1人と一匹というべきか)が移動した先は同年同時刻の2人が住む他の並行宇宙。しかしそこは1000年以上も科学文明が進んでいる。人々は反重力制御で浮遊通勤していて天空にそびえるビル群が林立している。ステューウイーがその理由をこう説明する、「キリスト教が生まれなかったので、科学の暗黒時代がなく文明が1000年も進んだ」のだと。タイソン博士もサブ・ゲストの2人(対談相手がメイン・ゲスト。そして毎回コメディアンと専門分野の学者がサブ・ゲストで呼ばれる)も「ここまでやるか」と驚いていた。

    マクファーレンは来年、2017年から2018年にかけてドラマとコメディが融合したSFドラメディ・シリーズを放映するという。楽しみだ。

    • 定番科学イメージ。重力は他の力に比べあまりにも弱い。

    米では高度で最先端の科学知見を子供たちや一般の人々に分かり易く解説して普及しようとする考え方が根付いているように思う。「コスモス」や新「コスモス」のように洗練された大作科学宇宙番組の制作。ディスカバリーチャンネルの「モーガン・フリーーマンが語る宇宙」シリーズ、ヒストリーチャンネルの「アルカリーリ教授のサイエンスレッスン」シリーズ、そしてナショナル ジオグラフィック チャンネルの「スター・トーク」シリーズのように、有名なハリウッドスター、高名な英・理論物理学者や米・宇宙物理学者がホスト役となり、ビッグバン、量子力学、ひも理論、並行宇宙、生命科学などの最先端科学を、洗練されたCGやアニメ、美しい映像を駆使して解説してくれる。

    お恥ずかしい話だが、当初管理人はこれら科学啓蒙番組に出てくるホスト役の科学者は外国の三流の学者たちだと思っていた。番組内容も分かりやすく、なるほど、なるほどと分かったつもりでいた。しかしビッグバンやひも理論、M理論、インフレーション理論などのつながりを理解できていなくて、それぞれの科学者が想像力をたくましくして突飛な仮説を発表し合っているのだなあ、と浅はかな理解をしていた。これらの科学番組はだいたい約40〜50分間の中に高度な科学理論をイメージ圧縮して構成されている。当然圧縮を解くと膨大な内容が含まれており、伝えきれず省かれた重要な科学知識もある。

    そこで番組で放映された分野の関連著書を購入(専門書や科学解説書類は高いのでまず古本屋を探すのだが)。すると「あれ?この著者、どこかで見た気がするが?」。なんと上記チャネルで放送された番組にホストやゲストで出演していた学者さんたちじゃないか。浅学の管理人が勝手に三流と思っていた教授や学者の人たちだと分かった。三流どころか超一流の学者さんたちだった。しかも常識から遠く外れたSFストーリーのような多次元宇宙や泡宇宙といった仮説も、ちゃんと科学的根拠をベースとしたものであるということがようやく分かってきた。

    ここで気づいたことがあるのでご紹介したい。

    その前に「定番科学イメージ」について説明をしよう。この「定番科学イメージ」というのは管理人がこれらの番組や著書を視たり読んだりしているうちに思いついた言葉だ。例えば一般相対性理論で重力レンズ効果などを説明するときによく使われる「光が曲がる」という場合。4次元空間をトランポリンの布のようにピンと張った2次元の布に例え、そこに太陽などの大質量の球体を置くと凹みができるという分かりやすい「イメージ」。今では相対性理論を説明したり紹介したりときには必ず出てくる「定番科学イメージ」だ。

    この「定番科学イメージ」がひも理論やブレーン宇宙論の説明の時に番組や著書に出てくる。

    標準モデルで統合された、自然界の4つの力のうちの3つ、電磁気力、弱い力、強い力。だが重力だけは量子論に組み込まれることを拒み続けている。なぜそうなのかは素人の管理人には分からない。しかし科学者たちは重力が他の力に比べ極端に弱いからだという。「え?そうなの?どういうこと?」と思ってしまう。例えば電磁気力は重力の「100億倍の、そのまた100億倍の、そのまた100億倍のさらに10億倍も強力」(10の39乗倍!)だという。これはヒストリーチャンネルで放映された番組「驚異の高次元空間」の中でホスト役のブライアン・グリーン教授(コロンビア大学・超ひも理論研究で有名)が説明してセリフだ。

    そして「地球に引っ張られて地面に落ちた鍵に小さな磁石を近づけると、簡単に引き寄せてしまう」というイメージ映像。巨大な地球の重力に小さな磁石が簡単に勝ってしまうという説明映像である。

    同じようにリサ・ランドール博士(ハーバード大学物理学教授。プリンストン大、MIT、ハーバード大で終身在職権を持つ初の女性教授!)の著書「ワープする宇宙」(25頁)

    やNewton別冊「次元とは何か」の「第5章 ランドール教授に聞く」(135頁)にも「小さな磁石が地球の重力に打ち勝ってクリップを引き寄せる」というイメージの描写がある。この「磁石とクリップ」のイメージで「弱すぎる重力」について説明している。つまり「定番科学イメージ」である。

    彼女はディスカバリーチャンネル「モーガン・フリーーマンが語る宇宙」シリーズの番組「多次元の世界」にも出演していて、重力だけが他の3つの力に比べ極端に弱いという謎を、ヒモ理論を使って、並行宇宙の他のブレーンとをつなぐ余剰次元に自由に拡散する閉じたヒモであるためと説明している。

    ライカー副長はうる星やつらの夢をみるか

    スタートレックには、宇宙大作戦、ネクスト・ジェネレーション(TNG)、ディープ・スペース・ナイン(DS9)、ヴォイジャー、エンタープライズの5つのTVドラマシリーズと12本の映画版がある。ほかにもアニメやゲームがある。

    ここでは主にTVドラマシリーズのトレビアをご紹介。

    40話「イカルス伝説」ネクスト・ジェネレーション

    「THE ICARUS FACTOR」1989/4/24米放映 宇宙暦42686.4

    この作品では舞台セットであるアンボー術の闘技訓練場が話題になった。

    アンボー術は暗棒術の意味(多分)で、防具を付け目隠しマスクをして相手の動きの気配を先読みしながら戦う棒術訓練だ。訓練場の縦長の壁面には「うるさい」、「やつら」とひらがなで朱書きされている。円形武台の中央には大きな朱書きの漢字「星」。その漢字の両側にカタカナで「ラム」と「アタル」。円形武台のせり上がった壁面には漢字の「水」とカタカナの「ユリ」。防具の前首辺りには「火 空 水」、「水 地 火」。

    スタッフの中に日本の漫画オタク、日本オタクがいたのだ。

    ライカー副長と有名な戦略武官であるライカーの父親カイルがこの訓練場で試合を行うシーン。ライカーは長年、父親に深い憎悪を抱き続けていた。ライカーが幼い時に母親が亡くなり、カイルは母親のいない息子を強く育てなければならないと厳しい態度でライカーに接していた。その態度をライカーは冷たい父親として受け止めて育った。アンボー術訓練はいわば二人がお互いの気持ちを曝け出すことができる唯一の場であった。アレ-ス号艦長の退官によりライカーがその後任に指名され、新艦長やアレース号乗員らに対する戦略ブリーフィングのために戦略武官カイルが教官としてエンタープライズ号にやって来た。カイルはトーキョー基地で「風林火山」戦略をまとめた大家として惑星連邦で有名だった。

    この「うるさい」「星」「やつら」セットを作ったのはデザイン・スタッフのリック・スターンバック。メガネとチョビ髭が印象的で、天体物理学者で楽しいトーク番組「スター・トーク」のホスト役ニール・ドグラース・タイソン博士にメガネをかけさせて白人にしたような、いかにもSFや「うる星やつら」が大好きそうな人物。彼は熱烈なトレッキーでアーティストでもある。カール・セーガンの科学啓蒙TV番組「コスモス」のアシスタント・アート・ディレクターとして参加したり、映画「ブラックホール」にも参加している。

    防具の「火 空 水」などはおそらく当40話の原案・脚本を担当したデビッド・アサエルの指示で描かれたのだろう。「風林火山」戦略や「アンボー術」など日本オタクでないと発想できないストーリーや小道具立てだ。

    タイトルのイカルス伝説。ギリシャ神話では、幽閉された塔から鳥の羽をロウで固めて翼をつくり脱出を図ったダイダロスとイカルスの親子の話だ。自分勝手な考えに固執しがちな息子を心配して、「塔から脱出して飛ぶ時は海面の湿気、太陽の熱に注意し、海面近くや上空にも近づくな」と戒めるが未熟な息子は親の思いを聞かない。そういうイカルス伝説から原案を発想したのかも知れない。

    またこの40話にはサブ・プロットとして「ウォーフの成長の儀式」についてもストーリー展開がある。こちらの方はもう一人の脚本家ロバート・L・マックローが担当したと考えられる。

    果たして立派に成長した息子ライカーと和解したいカイルの思いは叶うのか。ホロデッキで行われるクリンゴン人の儀式とはいかなるものか。それは見てのお楽しみ。

      映画「ビューティフル・マインド」を観て気づいたこと

      映画「ビューティフル・マインド」は日本公開2002年。監督はロン・ハワード。この作品でアカデミー賞の監督賞と作品賞を受賞した。「アポロ13」や「ダ・ヴィンチ・コード」など硬派の作品作りに定評があるようだ。主演はラッセル・クロウ。彼もこの作品でゴールデン・グローブ賞の主演男優賞を受賞している。
      映画の内容は、ノーベル経済学賞を受賞した天才数学者ジョン・ナッシュ博士の統合失調症との闘病生活の半生を描いた、サスペンス仕立ての見ごたえのあるものになっている。

      数学者物語は、数奇な人生、驚異の逸話、数多の天才の宝庫だ

      数学は苦手だが数学者の伝記は非常に面白い。この映画を観るまではナッシュ博士のことは知らなかった。冷戦時代にゲーム理論を知り、こんなことまで数学でできるのかと感心したことを覚えているが、ナッシュ博士の功績であることも知らなかった。2002年設立の優れた数学者に授与されるアーベル賞やこの賞を去年(2015年5月)ナッシュ博士が受賞したこと、そして残念なことにアーベル賞受賞後の4日後、岐路の途中で交通事故に遭い同乗していた夫人とともに亡くなられたことも最近まで知らなかった。受賞後であったことがせめてもの救いかも知れない。ご冥福をお祈りします。

      数学のノーベル賞はフィールズ賞(1936年設立。4年に一度、40歳以下の若手数学者が受賞対象)だと長年思い込んでいた。アーベル賞は賞金1億円、年1回贈賞で年齢制限なしという条件はノーベル賞と条件は似ている。そういう意味では「数学のノーベル賞」というべきか。数学はあらゆる科学(自然、人文、社会、応用など)の土台をなすもの。神が作った自然設計図かも知れない。その土台を発展深化させた天才数学者を称える賞はもっとあってもいいと思う。

      伝記で思い出すのは、ノルウェーのアーベルとフランスのガロア。2人は若くして亡くなった天才数学者だ。二人の業績の1つ、群論は今日の量子力学の基礎をなすものだ。またガロアは情熱的な政治活動家として、さらに性悪な女性に絡んだ決闘で20歳で夭折したことで有名である。
      (「ガロアの生涯 神々の愛でし人」L.インフェルト著、市井三郎訳。第1版は1950年、本著は1969年の第2版)。

      昔、学生の頃に第1版を読んで衝撃を受けた本だ。馬鹿げた理由で明日決闘で死ぬことを覚悟したガロアの絶望的な遺書が綴られている。「私には時間がない」、「なぜこのようなつまらないことで私は死ななければならないのか」、「私を殺害する者たちに寛恕あれ(大いなる許しを)」など、ガロアの悲痛な無念さが伝わってくる文章である。本著の原作者レオポルト・インフェルト(1898生)博士はポーランドの物理学者。ユダヤ人迫害を受けて後にアメリカに渡り、プリンストン高等研究所で10年にわたりアインシュタインと統一場理論について共同研究を行った。迫害を受けた数学者の視点で描いた悲劇的な数学者の伝記の上梓、ガロアの愛国的な政治姿勢が影響したのか母国ポーランドに戻り鉄のカーテンに抵抗した晩年(1968没)の行動は興味深い。インフェルト博士は、核兵器廃絶を訴えた有名なラッセル=アインシュタイン宣言の署名者の一人でもある。その足跡から気骨のあった数学者であることが窺える。

      ガウス幼少時の天才ぶり、ニュートンとライプニッツの論争、数論や幾何学などの数学分野を統一しようとするラングランズ・プログラムを提唱したラングランズ、谷山予想(=志村・谷山ヴェイユ予想)で有名な谷山豊と婚約者との悲恋、100万ドルの懸賞金のついた難問の1つ、ポアンカレ予想を解決したのに賞金を辞退したロシアの数学者ペレルマンなど、
      (「完全なる証明 100万ドルを拒否した天才数学者」マーシャ・ガッセン著、青木薫訳)

      腕の良いハリウッドの映画監督がうまく料理してくれたら素晴らしい映画が沢山できるのだがと密かに期待しているのだが。

      コンピュータの基礎概念を作った1人である天才数学者チューリングがドイツ軍が誇る最強の暗号機エニグマとの解読戦とチューリングの悲劇を描いた、ベネディクト・カンバーバッチ主演の映画「イミテーション・ゲーム」、若き数学者が数学を駆使してFBIの兄の事件を捜査支援する異色の海外TVドラマ「ナンバーズ/天才数学者の事件ファイル」など、ハリウッドの映画化の実績は十分だろう。

      日本映画では「好人好日」、「博士の愛した数式」があるが、ハリウッド・テイストとは別のテイスト。抽象的な数学を扱うのだから、十分に進化したCG技術や映像手法を駆使して日本らしい別角度の数学者物語を映画化してくれないかな。

      向精神薬の依存から解放される方法は、「間欠断薬」より「緩やかな減薬」がいい

      映画「ビューティフル・マインド」の中盤。ナッシュ博士が薬物療法を続けて1年が過ぎ幻覚を見ることもなくなった頃。その代償として、天才的な優れた精神活動は薬物によりブレーキがかけられ靄がかかったような状態となった。生活意欲も弱くなり夫婦生活もうまくいかなくなった。平穏な毎日だが果たして自分の才能を押し殺し夫婦生活をも犠牲にしてまで続ける意味があるのか。膨らむ疑問を押さえ込むことができなくなったナッシュ博士は妻のアリシア(ジェニファー・コネリー)が時間どおりに差し出す薬を服用しなくなった。アリシアに見つからない様に机の引き出しのブリキ箱へ薬を飲まず隠し入れ始めた。映画ではピンク色の錠剤10錠(5回分)がブリキ箱に溜まり始めた頃、再びあの幻想がナッシュ博士に訪れ始めるのだった。

      向精神薬の服用を急に止めるのは危険だ。降圧剤のようなものと違い精神に作用する薬の服用の中止は十分慎重にすべきだ。
      私はある知人の話を思い出した。
      その知人は16年ほど前にある外科手術を受けた。手術後しばらくしてめまいと不眠に襲われた。担当医師から「デパス」を処方されめまいと不眠は改善した。退院後も知人は症状改善のため医師の説明に従いデパス服用を続けた。
      知人の説明によると、不安や不安定な精神状態で「ゆらゆら」している時にデパスを服用するとガシンと万力で圧し止めたように「ゆれ」が止まり安定するそうだ。つまり良く効くのだ。だがしばらくするとまた「ゆれ」がはじまりデパスが必要となる。しかし服用間隔があるので守らないといけない。次の服用までその「ゆらゆら」を我慢しなければならない。こうして知人はデパスに依存するようになった。なんとか依存から抜け出すために1日2回服用を1回にしたり、1日置きの服用に変えたりなどの「間欠断薬」を試すがうまくいかない。「ゆれ」が逆にひどくなったそうだ。町の精神内科を変えたりしてもうまくいかない。そういう状態が4-5年続いた。
      そこで知人はNETで調査して、自宅から3-4時間かかる精神科・心療内科専門の病院をみつけ、専門の病院で診てもらうことにした。その専門の病院の先生は町の精神内科の医師と違い、じっくりとこれまでの経緯や症状についての知人の説明に耳を傾け、いくつかのテスト(不安や不安定の原因を探るテスト)を受けた。その結果、薬を替えましょうということになった。依存していた薬を替えるのは非常に不安があったそうだが、替えた途端、まったく別のゆったりとした落ち着きのある症状に変わったそうだ。知人は捜し求めていたものにようやくたどり着いた安心感を覚えたという。月に一度通院するようになり症状は改善に向かっていった。そして1年ぐらいたって症状も良くなってきた。遠路通院するのはもう必要ないので自宅近くの医師・薬局で薬がもらえるよう処方箋を書きましょう、ということになった。その時点では知人は就寝前に「ロヒプノール」を服用するまでになっていた。
      知人は自宅近くのかかりつけの内科医師に事情を説明し処方箋をみせロヒプノールをもらうようになった。ロヒプノールは依存性は強くないが急な服用中止は危険なので、知人は「緩やかな減薬」をすることにした。
      それは、1mgを少し(1/5ほどを)ハサミでカットし4カ月ほど続ける。副作用や悪い症状が出るようだったらカットを止め元の服用に戻す。うまくいったので今度は1日1mgの1/4をカットし4カ月ほど続ける。更に4カ月後に1/2をカット、つまり0.5mgの服用にした。そうやって1日1/4mg(0.25mg)服用になったそうだ。
      そしてその後は、1日置きに服用する「間欠断薬」に切替え、更に2日置き、3日置き・・と時間をかけて「離薬」を図った。いまでは今夜は1/4錠を服用したほうがいいかなと判断した時にだけ服用するようになったそうだ。
      ここまで16年かかったのだ。近年では1回の処方で14日分、1mgを14錠をもらうが2-3年かけて消費するようになったという。完全な離薬状態ではないが別に気にしないそうだ。1回の処方14錠の消費が4-5年、更に6年・・・10年となればいいという。

      知人は言う。「向精神薬は首より下の薬と違い、十分な注意と専門医の指示に従うことが必要だ」

      ジェニファー様のお顔に止まり散策後、無礼な振る舞いの謝罪もせずスクリーン上から逃げ去ったハエがいた

      ナッシュ博士の妻アリシア役にはハリウッドでも指折りのクラシック・ビューティ、ジェニファー・コネリーが名演し、彼女はこの映画でアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞その他の助演女優賞などを総なめにした。
      30年ほど前に出演した映画「フェノミナ」を観たとき、なぜこんなゲロゲロ映画(悪い映画という意味ではない。映画は面白かった)にこれだけの美少女が出るのかとビックリしたことを覚えている。
      そんな美貌、度胸、知性、名演技力などを兼ね備えたハリウッド・ミューズの1人が熱演中に不埒なハエが乱入し映像を汚したのだ。

      事件現場は映画の中盤、ナッシュ博士が薬物療法など治療を受けてから1年後。ベビー・カーを押すアリシア(ジェニファー・コネリー)と友人のソル(アダム・ゴールドバーグ)がプリンストン大の庭を散策している時だ。ナッシュ博士の症状が落ち着き始めたことなど近況を知らせに立ち寄った様子。ソルがアリシアのことも心配して君は大丈夫なのかと聞いた。彼女は心配事や揺れ動く心情をソルに打ち明ける。そして心の拠り所を結婚当時の思い出に頼るようにしていると。「結婚当時の彼を思い出すの。すると彼はやがて、私が愛していた昔の彼になる」。最もロマンチックなセリフを語り熱演しているところへ、この無礼者のハエが乱入したのだ!

      ①ジェニファー様の胸から首へと飛び上がり、あろうことか②聡明で知的な右額に止まり土足のまま歩き回り、③悪びれずにスクリーン左へと飛び去ったのだ。

      彼女はこの不埒な行為を意にも介さなかった。手で振り払うこともせず瞬きもしなかった。完全無視で対抗したのだ。

      しかしラッシュ試写やラッシュ・チェックでなぜ編集されなかったのか。
      1.ジェニファーがこれ以上の演技はできないのでこのままを使ってと主張した?
      2.監督、スタッフも無礼者のハエに気付かなかった?
      3.実は出演予定のハエで予定通りの演技だった?
      4.有力なハリウッド関係者の飼っているハエのため、ジェニファーも監督も文句が言えなかった?

      あなたはこの謎をどう判断しますか?

       

       

      ワープする第一下僕トーマス(ダウントン・アビー)

      :Warping the first servant,Thomas.(From Downton Abbey)

      「社交界」第9話 シーズン4
      (Episode 4.09 – 2013 Christmas Special)

      20世紀初頭、イングランド北東部の大邸宅「ダウントン・アビー」に居を構える貴族グランサム伯爵一家とそこで働く使用人たちを中心に、激動の時代とともに衰退していく英国貴族社会の人間模様を描いた英国TVの大河ドラマ。昨年(2015年)シーズン6でファイナルシーズンを迎え放送を終了した。エミー賞、ゴールデン・グローブ賞など数々の賞を受賞した良質のドラマ・シリーズである。

      魅力はたくさんあるが、筆者が特に感心したのはシナリオ・バランスの良さだ。登場人物が多いにもかかわらず、各話とも主要人物がバランス良く登場して各々が抱える問題や話題を織り込んでストーリーが進んでいく。ほかのTVドラマでは1話完結型が多いので、毎回多くの登場人物を出演させるとストーリーが発散して分かりにくくなってしまう危険がある。普通1プロットで1話完結が常道だが、中にはサブ・プロットを少しからませるストーリーもある。いずれにしてもドラマの見易さ、分かりやすさ、面白さはシナリオをどれだけ十分なほど練り込むかであろうと思う。その点ダウントン・アビーは毎回見応えがあり、面白いトリビアなど起きないだろうと思っていた。ところがである。なんとXメンやヒーローズに出てくるようなワープ能力を第一下僕トーマスが見せてくれた。

      ト-マスは容姿端麗だが自己中心的で野心家。仲間である他の使用人を見下して人の足を引っ張ったり、陰口を吹き込んで広めたりする策謀家である。

      第9話はローズ(伯爵の従妹の孫娘。事情があってダウントン・アビーで暮らしている)の社交界デビューを中心に様々なストーリーが展開する。伯爵一家と大半の使用人たちはローズに付き添ってロンドンのグランサム・ハウス(伯爵のロンドン別邸)に移動する。ダウントン・アビーにはブランソン(伯爵の亡き三女シビルの娘婿)とト-マスが留守番として残った。ダウントン(ドラマ設定ではヨークシャー)とロンドンでは300km以上離れている。

      ●ワープ場面はドラマの後半で起きた。ロンドンのグランサム・ハウスの使用人たちの食堂兼休憩室の場面で、執事のカーソンが伯爵夫人コーラの厚意で外出が許されてので一緒(使用人たち)にロンドン見物に出かけようと提案する。その話を聞きながら使用人たちが各自の席についたり食事の皿を準備したりしている。その横でワープしたトーマスが澄まして立っているのだ。カーソンが科学博物館やクリスタル・パレスなど自分の行きたい所を列挙し始めて皆があきれてしまう。カーソンが「王立科学研究所はどうかね」とトーマスに訊ねた。ダウントンからワープしたトーマスは黙って佇むだけ。カーソンがようやくその場の白けた空気に気がついて「まあ検討することにしよう」と部屋を出て行った。

      その後すぐにトーマスはダウントン・アビーへワープ。トム・ブランソンの外出のお供をするためだ。トムの弱みを掴んだと慢心したトーマス。トムと並んで後部座席に乗りたいとほのめかす。無礼な態度のトーマスに、「私が伯爵だったら隣に座れるか」とトムは強い口調で言った。トーマスは渋々諦めた。

      ●The warping scene happened in the second half of the drama. At the scene of a cafeteria and a break room of servants of Grantham House in London, Carson of the butler proposed to go out for sightseeing to the people (servants) with the goodwill of the Countess Cora being allowed to go out. While listening to his proposal, the servants are on their own seats and preparing meals dishes. Thomas warped from Downton is standing calmly sideways. Because Carson enumerated the science museum and Crystal Palace etc where he wanted to go, everyone was dumbfounded. Carson asked Thomas, “How about the Royal Institute of Science ?”. Thomas only stood silent. Carson finally noticed the ruined mood of the room. He said, “I will consider it”, and went out of the room.

      After soon Thomas warped to Downton Abbey. The reason is to accompany Tom Branson’s going out. Thomas was proud. He thought that he held Tom’s weak point. He hinted, “I wants to ride the back seat side by side with you”. Tom harshly told Thomas in a rude manner, ” If I am the Count Crawley, can you sit side by side ?”. Thomas reluctantly resigned.

      なぜこんなトリビアがおきたのか。時系列ではなくランダムで撮影し後で編集してつなげたのだろう。普通ならトーマス役のロブ・ジェームス=コリアーが気づいているハズだ。「私はダウントン・アビーで留守番をしているので、ワープ能力を発揮しない限り、ここのグランサム・ハウスの場面には立ち会えないと思います」とユーモアを交えながら監督にクレームを出したことだろう(筆者の想像だが)。まあご愛嬌である。