ウクライナ危機PARTⅥ ロシア軍の対生物化学兵器の除染方式は「高温焼却」。攻囲されたマリウポリなどで使われたら証拠保全はできないだろう

ディスカバリーCH「徹底検証!ロシア軍の秘密 核科学部隊」から

(N:Nuclear核、B:Biologial生物、C:Chemical化学)

  • 「細菌も有害物質も一気に焼き尽くす」この除染方式がロシア軍NBC部隊のやり方

生物兵器や化学兵器で敵を制圧しても、汚染された地域になってしまって進軍・侵入できなければ完全勝利とはいえない。除染して無毒化しなければ占領できない。そこで生物も有害物質も高温で焼き尽くせば短期間で無毒化できると気が付いた。
火炎放射器。小型で効率的な火炎放射器の開発。燃料気化爆弾の進化版、サーモバリック爆弾が登場した。

  • ロシア軍NBC部隊の火炎放射武器と装備・兵器

<LPO火炎放射器 歩兵隊用軽量モデル>
グレネード型サーモバリック弾4発装填可能。ポンプアクション式。
殺傷範囲 半径3m。

<MPO-A火炎放射器 コードネーム“Borodach”ひげ男>
サーモバリック爆薬のロケット弾を発射。
後方噴射がないので室内などの閉鎖空間からも発射可能。
市街戦用に適している。
建物内に隠れている人間もろとも焼き払う威力がある。

<PRO PDM-A火炎放射器 コードネーム“Prize”賞金>
コードネーム“Shmel”(マルハナバチ)型の後継機の小型版だが、有効射程が伸びて重量も2kg軽量化。
有効射程1700m。
サーモバリック爆薬のロケット弾を円筒に入れて、ロケットランチャーに装填。発射するとロケット弾が飛び出し、そのあと円筒が後追いで排出される。有効射程と命中精度が向上。

<NBC火炎放射器分隊>
8人編成。各自が火炎放射器とアサルトライフルを装備。
8人乗車可能な装甲車両BMO-T(T-72車体ベース)。
BMO-Tには、15セットの砲弾と重火炎放射器、12.7mm口径のコルド重PKM機関銃の兵装。車体にはNBC防御装置が施されている。

<特殊RHM化学調査用装甲偵察車>
放射線、数千種類の毒物、土壌汚染などを調査分析する様々な装置やセンサーを装備したBTR-80装甲兵員輸送車から派生した車両。
生物兵器、化学兵器を自動検知したり、有毒物質の種類や量を測定したりできる。他にも遠距離から放射線と化学物質を調査できる装置もある。レーザー光を照射してその屈折角度から化学物質の種類と量を特定することもできる。最長2km、約1500種類の有毒物質を特定可能。
特定調査したら、信号弾を打ち上げ車外に出ずに、「Toxic Hazard」(有毒 危険)と書かれた黄色い旗を、汚染領域に突き立てる。

<AMS-701システム除染車>
汚染地域を調査して帰ってきた特殊RHM装甲偵察車を、当除染車2台で除染する。1台は右側、もう1台は左側から高温ジェットと特殊な除染液を噴霧する。
噴霧器はチェコ製ジェットエンジンM701が使われている。

<重火炎放射器システム TOS-1A 多連装ロケットランチャー>
サーモバリック弾頭のロケット弾を24発装填できる多連装ロケットランチャー。
T-72車体に24基の発射管を装架、装填車TZMから約1時間かけて装填完了。
射程6km。24基を発射すると4万平方m、フットボール場8面を焼き尽くすことができる。

<サーモバリック爆薬・ロケット弾の爆発の仕組みと効果>
サーモバリック爆弾は段階的に爆発する。
①着弾するとMRVU着発信管が小型爆弾を爆発させる。
②爆発燃焼剤が散乱拡散して粒子の雲を形成する。
③すぐに次の爆発で粒子の雲が発火する。

その時の爆発効果は
・高温の火の玉が発生、周辺が焼き払われる。
・火の玉の中心に高圧域ができ、建物や人間は破壊され、浅い防空壕は天井が押し潰される。
・粒子の雲が燃え尽きると爆風が発生し、建物や人間はバラバラに吹き飛ぶ。

  • 化学兵器を使って制圧し、すぐに除染と称して焼き払う。証拠は残らない。欧米は化学兵器使用を証明できない

ウクライナ南東部とクリミヤを結ぶ回廊の拠点、マリウポリ。ロシア軍は早く制圧占領したいが、アゾフ連隊の頑強な抵抗でなかなか落ちない。いらだつプーチンとしては、NBCの大量破壊兵器を使ってでも手っ取り早く落としたいところだろう。

<短編小説「プーチンの逡巡と決断」>

核兵器使用は欧米の反発がすさまじいと予想されるし、使用して占領できたとしても放射能汚染地帯ができ軍の行動が制限される恐れがある。最後の手段にすべきだろう。

生物兵器はコントロールが難しい。自軍にも感染が拡大する恐れがある。
ここは化学兵器だな。
マスタードなどのビラン剤は皮膚症状などの証拠が残るし即効性がない。やはり早くマリウポリを占領するには、即効性のある神経済がいいが、サリンやVXは取り扱いが難しい。
やはり「混ぜると危険」、逆に言えば「混ぜなければ安全」なバイナリー化学剤「ノビチョク」にするか。

使用後の後始末は、広域汚染地帯はTOS-1Aで焼き払い、あとは火炎放射器分隊を投入して、焼却漏れがないようにするのがいいだろう。

外向けには「ウクライナのナチが化学兵器を使い市民を虐殺しているので、ナチ部隊への攻撃と同時に、汚染された地域の除染・無毒化を図り焼却を行った」と発表しよう。

欧米もウクライナもマリウポリには一歩も入れさせない。入れなければ証拠を保全することもできない。証拠がなければハーグ(国際刑事裁判所)に訴えられてもどうってことはない。

 

ウクライナ危機PARTⅤ われはロシアなり プーチンを剥ぐ

ナショナルジオグラフィックCH「ライバルが暴く 真実と秘密」から

  • 大ロシアよ、もう一度」。金も権力も手に入れたプーチン、次は大ロシアを復興させた英雄として

19世紀末、ロシアの領土は、西はバルト海から東はアラスカに至るまで、全長9千6百Kmに及んだ。世界の全陸地の6分の1を占める大帝国となった。ソ連邦時代も周辺の他民族を属国化して衛星国家として支配した。ローマ帝国も他国を吸収し栄光と安定に包まれたローマ大帝国を築いた。

<プーチンの妄想>

腐敗した西側諸国から脱し、真に理想的な大ロシア帝国を復興させる。ロシアにはその使命がある。西側の毒に冒されたウクライナなどは荒療治であっても強制的に目を覚まさせないといけない。それができるのは強力なリーダーシップと使命感を理解している私(プーチン)にしかできない。それに反対したり抵抗したりする国は、ナチと同じで断固たる態度で排除していくしかない。国内外で迷ったり、十分理解できていない人々もいずれ私の考え、行動を理解するだろう。
時には非情な手段を行使しても使命達成のためには必要悪だ。

プーチンの妄想は身勝手な自己の野望達成と殺戮を正当化するための言い訳にすぎない。大ロシア帝国の復興のためには犠牲が出るのは仕方がないと、戦争犯罪行為を「大義のための必要悪」とすり替えているのだ。
戦闘員でない子供、老人、女性たち、無辜の民を無差別に殺戮するのは明確な戦争犯罪行為である。

頭のおかしな芸人が「プーチンにも正義がある」と公器であるTVで言ったそうだが、それは「大量虐殺にも大義がある」と同意語である。このような芸人を重宝がる日本のマスゴミもプーチン同様、正常感覚がマヒしているのだろう。

  • プーチンは野望達成には手段を選ばない

寡黙で用心深く本音を出さないプーチン。
ナショナルジオグラフィックCH「プーチン大統領が語る世界」から、彼が語る事の裏を推測してみよう。

<死ぬまでに何を成し遂げたかが大事だ>

暗殺未遂が5回あったという話から、インタビューアで映画監督のオリバー・ストーンが怖くないのかという意味を込めて、暗殺のために警護官になる者がいるかも、あなたの運命とは?と訊いた。
「人の運命は神のみぞ知るだ」
「安らかな死かな」虚勢を張っているプーチンにオリバー・ストーンが皮肉な解釈を返した。
「誰にでも必ず死が訪れる」ストーンの皮肉に怒りもせず余裕の態度で答えた。
「大事なのは何を成し遂げるかだ」


(ナショナルジオグラフィックCH「プーチン大統領が語る世界」から)

金も権力も手にいれ、ロシアを自分の好きなように動かすことができるようになった絶頂期のプーチン。独立国家共同体(CIS)協定に調印しておきながら、いまさら脱退してEUやNATOに寝返ろうとする裏切り者のウクライナ。偉大なるロシア復活の足かせになる連中は排除するしかない。

<チャンスは待つものではなく作り出すもの。無名から一気に人気政治家に躍り出る>

混乱のロシアでアル中のエリツィンに群がり、国営企業をタダ同然で手に入れたりして巨万の富を築いた新興財閥のオリガルヒたち。ロシア連邦の要職にも就き金の力で大統領でさえうまく操縦できると高を括っていた。

一方プーチンの狙いは違っていた。彼が手に入れようとしたのは最高権力だった。古巣KGBの後継機関FSBの長官に就任した1年後、大統領府に潜り込んだ。偶然なのか第1副首相に指名されたその日に、首相が退陣し、そのまま首相代行となり、すぐ首相となった。

エリツィンはもう限界だった。第二次チェチェン紛争も起きてこれ以上の大統領職務には耐えられない。アル中でろれつも回らないエリツィンは後継者となる首相を探していた。適当な候補がなかなか見つからなかった。オリガルヒとつるんで不正蓄財を行っていたので、捜査の手が伸びていたのだ。

そこへプーチンがエリツィンに近づき耳元でささやいた。
「大統領、私はFSBを掌握しています。検察もあなたの政敵プリマコフもチェチェンもコントロールできます」
「本当か!どうやって?」
「スクラトフ検事総長がレッド・スパロー2人の罠にかかってSEXスキャンダルで失脚したのを覚えていますか?」
「ああ、もちろん覚えている。あれで少し命拾いをした。だから君を首相に据えたのだ」
「だがいつまた火が付くか不安でしょう。安心して引退するにはあなた守ることができる実行力のある人物を後継者に指名すればいい」
「私の頭痛の種を解決してくれるなら、喜んで君を次期大統領に指名しよう。計画があるのか?」
「すでに準備は整っています。チェチェンも同時に解決します」


(ナショナルジオグラフィックCH「プーチン大統領が語る世界」から。
「私は・・辞めようと、任期満了の前に辞任を・・そうするべきだと気づいたのです」たどたどしい口調で辞任を表明するエリツィン)

<1998年>
7月 プーチュン、FSB長官に就任

 FSB(ロシア連邦保安庁):KGBの後継機関。米CIAに対抗するスパイ機関。盗聴、暗殺、毒殺、拉致、拷問、扇動、体制転覆、陥穽、何でもあり。

 <1999年>
3月  スクラトフ検事総長の女性2人とのSEX現場の映像がTV局に持ち込まれる。

8月 第二次チェチェン紛争が開始
8.9 プーチン、エリツィン大統領により第1副首相に指名。そのまま首相代行に。
8.16プーチン、首相に就任
8.31 モスクワ中心部:ショッピングモールで爆弾テロ(死亡1人、40人負傷)。


(「そいつを黙らせろ プーチンの極秘指令」著者マーシャ・ゲッセン。ロシア人ジャーナリスト、米に亡命中。
ナショナルジオグラフィックCH「ライバルが暴く 真実と秘密」から)

9.9  モスクワ・グリナノフ通り:集合住宅で爆破事件(死亡94人、164人負傷)。FSB工作疑惑
9.13 モスクワ・カシールスカヤ街道沿い:集合住宅で爆破事件(死亡119人)。FSB工作疑惑
9.16 ロシア南部・ヴォルゴドンスク:集合住宅で爆破事件(死亡17人、72人負傷))。FSB工作疑惑


(ナショナルジオグラフィックCH「ライバルが暴く 真実と秘密」から。何でもあり、手段を択ばないプーチン。自作自演?でチェチェンに侵攻)

9.23 ロシア軍がチェチェンの首都グロズヌイを無差別爆撃
10.1 ロシア軍の地上部隊がチェチェン侵攻を開始
12.31 エリツィンが辞任 プーチンを大統領代行に指名

<2000年>
3.26 
大統領選挙でプーチンが過半数を獲得して当選
5.7 プーチンが第2代ロシア連邦大統領に就任。

<2002年>
FSB元職員でイギリスに亡命し、猛毒ポロニウム210で暗殺(2006.11.23)されたアレクサンドル・リトビネ
ンコは、その共著のなかで「集合住宅連続爆破事件は、プーチンを権力の座に押し上げるためにFSBが仕組んだ」と暴露

<忠誠を誓い見返りを献上するオリガルヒは優遇、反抗するオリガルヒは潰す>

プーチンの反体勢力を構築しようとしたベレゾフスキー(石油財閥)やプーチン批判を始めたホドルコフスキー(金融財閥)はプーチンの怖さを過小評価していた。
2003年10月、状況が一変した。ロシア最大の富豪ミハイル・ホドルコフスキーを逮捕してその姿をTVにさらした。私に逆らえばこうなると明確なメッセージ発した。オリガルヒたちは慌てて帰国し逮捕しないようプーチンに頼み込んだ。
そして不気味な不審死が連続していた。


(ナショナルジオグラフィックCH「ライバルが暴く 真実と秘密」から)

  • だが抜け目のないプーチンの言い分は違う

・「エリツィンが私を選んだ理由はわからない」(不正隠しの交換条件だったとは言えないよ)

・「最初打診があった時は断った」(オリバー・ストーンも思わず「断った?なぜ?」)

・「オリガルヒを生んだ国有財産の無償貸与をやめさせた。民営化はやめない。より公平にするために。私の目標は民営化を止めることではなく、より体系的かつ公平にすることだ」
(簡単に言えば、私プーチンとシロヴィキ(治安国防官僚)に従順な者には公平な分配がある。君ら従順なオリガルヒが稼ぎ、力を持ち君らを守るわれら権力者にも利益を公平に分配することが大事だ)


(ナショナルジオグラフィックCH「プーチン大統領が語る世界」から)

<プーチンが恐れること>

本音をみせないプーチンだが、注目すべきは「最初は断った」という発言。
オリバー・ストーンも思わず「断った?なぜ?」と問い返した。筆者も、嘘つけプーチンと思った。プーチンは国の責任者になることは大変なことだという。ストーンが、あなたは官僚として長い経験があるので変わらないだろうと問い返す。全然違うとプーチンが強く否定。官僚なら友人と自由に合えて自分の仕事の範囲での責任を負えばいい。だがロシア1国の責任者となるとすべての責任を負うことになる、と。

ここまで聞いていても当たり前のことでどうもよく分からない。何がいいたいのかプーチン。そして次のプーチンの説明でどうやら「最初は断った」ということは嘘でも、「大統領職につく」ことに迷いがあったということを別の言い方で言っているのかと推測した。

「官僚を続けていけるのか、解雇されるのかもわからなかった」

エリツィンは「大統領代行にする」と言っているのに、なぜ「解雇されるかもしれない」という話がでてくるのか?

これは「大統領にする」という話ではないからだ。大統領代行になっても大統領選で負ければ、無職となる。つまり解雇されたのと同じだ。悪行の数々をしてきて多くの人から恨みを買ってきたプーチンにとって、ただの人になることは恐怖だったのだろう。そして次の発言でそれがはっきりした。

「私は1つのこと考えていた。“子供たちをどこに隠す?”
なぜ?とストーンが問い返す。
「考えてみてくれ。私が解任されたら護衛が外される。どうやって生きていく?どう家族を守る?

権力を無くすことはプーチンにとって最も恐れることなのだ。

だが本音を見せてしまったと気づいたのか、身を乗り出してしゃべるのを止め、イスの背に体を預けると本音を閉じ建前を説明し始めた。元の用心深いプーチンに戻っていた。
「だがこれも運命なら最後まで進もうと決めた」と結んだ。


(ナショナルジオグラフィックCH「プーチン大統領が語る世界」から)

 

ウクライナ危機PARTⅣ 殺戮者プーチンを生んだ国。 キエフ大公国→ロシア帝国→モスクワ・クレムリン→スターリン

  • キエフ大公国→ロシア、ウクライナ、ベラルーシなどの大本となった国。祖先が同じ兄弟国と言われる所以

諸説あるが、9世紀末、黒海北西部のスラブ人が争いを続けていた。無益な争いに気づいた彼らはヴァリャーギ(ヴァイキング/ノルマン人スカンジナビア人)に頼み込んで、自分たちをまとめる指導者を求めた。
そこでやってきたのが、ルーシ族(Rus)のリューリクが率いる一団。
ラドガとノヴゴロド(現在のバルト3国付近)を治めたリューリクの死後、後継者オレーグとリューリクの子(と言われている)イーゴリが南のキエフに都を移した。これがキエフ大公国(英:キエフ・ルーシ)である。

(「Castle Siege 今は無き名作ゲーム」から転用)

但し、ロシアがルーシの正統な後継とする学派は「キエフ・ロシア」と呼び、ウクライナこそ正統とする学派は「ウクライナ=ルーシ」と呼ぶらしい。(WIKI)

ギリシャ語やラテン語では地名の語尾に「ia」をつけることがある。(アジアAsia、ルーマニアRumaniaなど)
ギリシャ語やラテン語を公用語としていた東ローマ帝国(ビザンツ帝国)では、北方の交易相手であるスラブ諸国をRusia(ルシア)と呼んだ。

12世紀頃から内紛で衰退がはじまりいくつかの小国に分裂し始めた。更なる内乱などでキエフ一帯は荒廃し、人々はキエフを見限り北のノヴゴロドや北東のモスクワに移っていった。13世紀中頃、モンゴル帝国の侵攻によりキエフ大公国は崩壊した。

● ロシア帝国の勃興と繁栄、そして終焉 ヒストリーCH「古代帝国の先端技術 ロシア」から

モスクワ方面ではウラジミール・スズダリ公国が細々と存在していた。
1276年頃、中世ロシアの英雄でウラジミール大公国の大公となったアレクサンドル・ネフスキー(アレクサンドル一世)。その末子ダニールがモスクワ公となり、その公都をモスクワにしてから発展がはじまった。14世紀前半、イワン一世治世下になると、ウラジミールよりモスクワが政治・宗教の中心となっていった。

15世紀、イワン三世(モスクワ大公)がモンゴルのタタール人の支配を駆逐した。モスクワを再建し「第三のローマ」と称し、ロシア帝国の礎を築いた。

その後、孫の残虐なイワン(四世)雷帝が帝国をヨーロッパ最大の領土に拡張した。

17世紀末、2m超の体躯と鷹揚な性格のピョートル(一世)大帝が出て、ヨーロッパの技術や知識を積極的に取り入れ、軍事国家を築き上げた。1721年ロシア皇帝(インペラトール)を名乗った。

サンクトペテルブルグ建設には、沼地を手で掘り返すという過酷な労働で約2万5千人の国民の犠牲が払われた。そのためサンクトペテルブルグは「骨の街」とあだ名された。そしてピョートルは突然サンクトペテルブルグを首都にすると宣言した。300年近く続いた首都モスクワがただの1都市となった。国民が困惑しても皇帝には逆らえない。絶対的な存在であるからだ。領土は更に東アジアにまで拡大した。

ピョートル大帝亡き後、大帝の孫と結婚したドイツ人女性が夫を失脚させ、女帝エカテリーナ2世が誕生、帝国の実権を手中にした。意志が強く野心的なエカテリーナは、ピョートル大帝の遺志を継ぎ、帝国の近代化を完成させた。領土は更に拡大した。莫大な財源を使い、病院、福祉施設、学校を整備した。都市の建設を加速させ、サンクトペテルブルグを輝くロシア帝国の首都にふさわしいものにした。

超大国となったロシアを狙って、19世紀初、ナポレオンが50万人超の大軍を率いて侵攻してきた。エカテリーナの孫、皇帝アレクサンドル一世は、600年前のモンゴル来襲の危機の時にとった行動に倣い、勝算がない時は逃げるが勝ちと判断した。そこでモスクワに至るナポレオンの進軍ルートの全てを焼き払う焦土作戦を実施した。モスクワを占領されてもアレクサンドルは和平に動かず、ナポレオン軍を無視した。アレクサンドルが和平に折れてくるだろうと予想していたナポレオンの企図は外れた。仕方なく帰途についたナポレオン軍に、過酷な冬将軍が襲い掛かり、帰国できたのはナポレオン遠征軍の一割にも満たなかった。こうしてロシアの敵はいなくなった。

19世紀末、ロシアの領土は、西はバルト海から東はアラスカに至るまで、全長9千6百Kmに及んだ。世界の全陸地の6分の1を占める大帝国になっていた。

ニコライ二世は広大な帝国を管理しきれずに崩壊するかもしれないと懸念し、また極東地域への政治的経済的影響の強化を兼ねて、19世紀末、世界最長となる9228kmのシベリア鉄道の本格的建設に着手した。アメリカ横断を2度行うのに等しい距離である。1904年、主要路線ができたロシアは、アジア地域への勢力拡大を図って東アジアへ進出した。当然同じく中国大陸への進出を始めた日本と衝突することになった。日ロ戦争である。
日ロ戦争で日本に敗北したロシアでは、虐げられていた国民の反感が皇帝に向けられた。1914年、国民の目を逸らそうと第一次世界大戦に参戦した。これにより国民の生活を更に過酷疲弊させ、多くの犠牲を出した。国民の命を犠牲にしながら帝国を拡大してきた皇帝に対し民衆の怒りは沸点に近付いていた。
1917年3月15日、民衆の反乱でニコライ二世は追放された。200年続いた帝政ロシアの終焉である。

そしてスターリン、プーチンという怪物を生むモスクワ・クレムリンの時代になる。

  • ヒトラーを超えるクレムリンの怪物スターリン ヒストリーCH「ヨシフ・スターリン」から

スターリンはレーニンと共にボリシェヴィキ(レーニン主導の左派)を率いてロシア革命を先導し、プロレタリアート独裁(労働者階級による政治支配)を標榜して帝政ロシアを倒し、権力を掌握した。
1924年1月レーニン無き後、その後釜に座ったスターリンは、ワンマン独裁を確固たるものにするために、政敵、官僚、逆らう国民を容赦なく粛清した。スターリンは国家目的(農業・工業の中央集権化)を達成するためには、どのような非道なことをしてもよいと、レーニンの主張を独裁確立のために都合の良い方向に解釈した。反対する者、命令に抵抗する者、さらには反対か抵抗か判別できない者まで、スターリンの一存で秘密警察に始末させた。脅しと恐怖で国民を支配した。
ロシア史上の戦死者を全部合わせても、スターリンが虐殺した人の数には及ばない。
国民のためにと標榜しながら、国を支配し、同時に容赦なく国民へ非道な行為を続けた。
彼はその語録で「一人の死は悲劇だが、数百万人の死は統計だ」と嘯いた。これは彼の大量虐殺への強い無感覚性を示している。

 警察権力を国民支配のために行使・活用

 米初の女性国務長官となったオルブライト元長官は語った。「国民を恐怖で支配するためにスターリンは秘密警察(NKVD:エヌカーヴェーデー、のちのKGB)を創設した」。暴力装置である警察権力を行使して、国民を支配するため恐怖で脅したのだ。

理由を示さず逮捕・処刑。脅しでじわじわと人を支配し、自分の言いなりにする

スターリンはボリシェヴィキの頃から猜疑心が強く用心深い男と呼ばれていた。彼の世界観は「人は誰でも怯えて生きる」だった。だから人を怯えさせるようにすれば、人を支配し言いなりにできると考えていた。
スターリンはロシア国内の独裁体制を固めると、世界制覇のために国を急速に軍事国家に替えようとした。反対する者、抵抗する者が出てきたため、恐怖と脅しで人々を従わせようとした。

ジョンソン大統領の顧問、そしてカーター政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた政治学者、ズビグネフ・ブレジンスキー氏は、スターリンの恐怖支配の手口を次のように語った。
モスクワから各地の秘密警察に電報で指示が送られた。
「君の町のノルマは7500人を逮捕すること。そのうちの3000人を処刑すること」誰を何の容疑で逮捕、処刑するのかは一切しめされていない。
粛清は次第にエスカレートし、国籍の壁がなくなり、ポーランド人、ドイツ人、ブルガリア人、マケドニア人、・・と増えていった。機密解除された文書の推計から、スターリンが粛清した人の数は約4000万人にも上ると言われている

作家のジョナサン・ブレント博士はスターリンの人心操縦方法を次のように説明している。
スターリンは脅しのプロ。少しずつ長い時間をかけて、自分の言うことをほぼ何でも聞いて動く、忠実で従順な側近に作り上げていく

都合のいい解釈で法を無視し好き勝手を行う。コントロール下のメディアを使い、信頼できる指導者のイメージを国民に植え付けた

スターリンは、レーニンの考え方を都合のいいように解釈して引き継いだ。レーニンは指導者が先導するプロレタリアート独裁を主張した。それをスターリンは国家目的・5カ年計画(農業・工業の中央集権化、急速な工業化)を達成するためには、何をしても許されると都合のいい解釈に変容させた。クラーク(富農)から農地や財産を没収し、処刑するかシベリア送りにした。貧しい農民からは、強制的に穀物を拠出させ集団農場(ソフホーズ等)に送り込んだ。スターリンはクラークは根絶してもよいと判断して、クラークかどうかの判断はスターリンの一存で決めた。1930年代に大飢饉が発生、集団農場では餓死者があふれ人肉喰いも起きた。餓死者は何百万人にもなったが確かな数は不明だ。しかしスターリンは食料を都市部に集め人為的に大飢饉を作り出した。

狡猾なスターリンは、非道な粛清の一方で、コントロールされたメディアを活用して、自己のイメージを「国民のために働く力強い指導者」と映るように誘導し国民を洗脳した。

公文書改ざん、桜を見る会など明らかな犯罪を見逃すようになった検察。コロナ死者の増加、検査数の意図的な縮小など明らかなコロナ対策の失敗を咎めず無能な首長らを露出続けるTV。救急医療いまだ崩壊中なのに出口が見えてきたと嘯く最高責任者とそれをヨイショするマスゴミ。
そういう腐敗した土壌を放置し続ける世界から、スターリンやプーチンといった怪物が発生してくる。
怪物の犠牲になるのはいつも庶民であることは歴史が繰り返し警告している。