警察署長ジェッシイ・ストーン シリーズ

2017.9.3公開記事(2019.4.2加筆)

・2008年、レンタルビデオ店でたまたま借りた3部作。その出来の良さに感動。そして2010年、2半年ぶりにレンタルビデオ店で④話を発見。すぐさま借りて観賞。
さらに2016年、「4番目の真実」を発見。どうやら第9話にあたるようだ。まだ見ていない残りを探さねば。

・2017年、エアチェックしていたら、AXNミステリーで第1話から第8話まで放送するという。やったー!という感じだ。すこしずつ味わいながら視聴後の感想を書いていこう。

第1話:
おや?どうやら「影に潜む」のようだ。なぜパラダイス警察署長に採用された経緯が分かる「暗夜を渉る」から放送しなかったのか?まあジェッシー・ストーンの背負っている過去も十分解るし、愛犬レジーがなぜジェッシー・ストーンのもとに来たのかも判明する話なので気にすることはない。

◎シリーズ・タイトル
①話「暗夜を渉る」
②話「影に潜む」
③話「湖水に消える」
④話「訣別の海」
⑤話「Thin Ice(薄氷)」(2019.4.5追記)
・・・・・
⑨話「4番目の真実」

シリーズは①、②、③の時系列だが、個々に完結したドラマになっている。どれから見ても楽しめるが、3話ともお決まりの約束事がある。意表つくクライマックス、署長の近しいものが亡くなるか負傷する、などとなっている。より面白く観るために、主人公を取り巻く人間関係が理解できているほうがいいので、順番にご覧なることをお勧めする。

◎ストーリー

①話「暗夜を渉る」

離婚で傷ついた、トム・セレック扮するジェッシイ・ストーンは、ロス市警を辞職し田舎町パラダイスの警察署長に採用される。アルコール臭を漂わせ、なんでも我流を押し通おそうとする。しかし実直に勤務するその姿に、眉をひそめていた署員も町の人も次第に信頼を寄せていくようになる。そんな折、殺人事件が起き、どうやら自身の署長採用に関係があるとみて捜査を始める。

②話「影に潜む」

町で射殺死体が発見される。それが発端となり無差別殺人事件が続発する。署長のジェッシイ・ストーンは捜査を開始するが、抜け目なく巧妙に立ち回る犯人を逮捕することがなかなかできない。警察への早期逮捕の圧力も高まる。
そこで尻尾を出さない犯人に対し、ジェッシイ・ストーンが誘いの罠をかける。

③話「湖水に消える」

足にブロックの重りを付けた未成年の少女の腐乱死体が浮かび上がり、岸辺で発見される。 学校、家庭、家出先を捜査していくと、容疑者が次々と浮かび上がる。ところが、真犯人の巧妙な計略が隠されていた。

④話「訣別の海」

署長ジェッシイを嫌い愚痴とひがみばかりを繰り返す部下のデアンジェロ。隙あらばジェッシイの足をすくおうとする。しかも若くて有望で目をかけ鍛え上げようとしていたスーツケースはスーパーの強盗事件で負傷し昏睡したまま入院中。人手不足の中、町のパトロールをして駐車違反のキップを切るジェッシイは、多忙な些事が続きアルコールが増えるばかり。医者の提言で、アルコールを忘れるために、没頭できる未解決事件を手がけることにした。窓口係を人質にとり逃走しわずかな金を奪って逃げた銀行強盗事件を手がける。人質はその後遺体で発見されたが犯人は未だつかまっていない。事件調書はずさんであまり役にたたない。関係者への聞き込みを始めると、不穏な男が付けてくるようになった。

⑤話「Thin Ice(薄氷)」(2019.4.5追記)

ジェッシイと州警察のヒーリー警部が車で張り込み中、突然銃弾を浴びせられる。重症のヒーリー警部は動かない。右腕を負傷したジェッシイは、とどめを刺そうと近づいてくる相手に銃で反撃、負傷した相手は驚いて逃げ出した。パラダイス署に戻ったジェッシイに、町の行政委員会のトップ、ハンソンから呼び出しがかかる。ハンソンは、退職したデアンジェロの後釜に、義理の息子バトラーを押し込もうとするが、デスクワーク経験しかないバトラー採用にジェッシイは難色しめす。頑固で従順でないジェシイに、解雇することもできるぞと権限を振りかざし脅すハンソン。警察署に関することについては、指図は受けないと返すジェッシイ。

署に戻ると、他州で起きた乳児誘拐事件の被害者である母親が捜索願いに来ていた。誘拐犯らしき人物からの手紙が届いて、それには「子供は愛されている」と記されていた。消印がここパラダイスとなっていた。

町の行政委員会からは「町の観光にマイナスとなる事件に首を突っ込むな、収入源となる駐車違反キップ切りに励め」と促される。「君が追い出したデアンジェロは違反キップ切りはトップだった、署長として好ましくない」と面と向かって嫌味を言われる。

わざわざ遠くから足を運んで乳児誘拐犯の捜査を依頼しにきた母親の願いを無視するのか、と部下から突き上げられる。昏睡状態から目覚めて通常勤務に復帰させたが、いまだ言動に不安定なところがみられるスーツケース。ジェッシイらを銃撃した犯人の手がかりや動機も皆目掴めない。ジェシイは深酒が多くなっていく。

この5話からは、前4つの話とは微妙に違うストーリー展開になる。愛犬レジー、ヒーリイ警部まではお約束どおりだが、横糸的な少女が絡む事件が無くなった。もちろんそれだけではないのだが、なにかタッチが違う感じがする。

⑨話「4番目の真実

相棒レジーを失い、こころのすき間を埋め切れない署長ジェッシイ。深酒に頼ったり町を離れた女友達を訪ねたりするが解決にはならない。そこで未解決事件に没頭しようと考え州警察のシドニー警部補を訪ねる。捜査能力は優秀だが問題行動が多いことを知るシドニー警部補は、報酬は経費だけでいいので未解決事件を担当したいというジェッシイの申し出に戸惑うが、信用して未解決事件ファイルの束を渡す。案の定、翌日酒を飲みすぎて遅刻し、任せていいのかシドニー警部補は迷う。どうしても事件を担当したいと押し通すジェッシイが選んだのが、「ボストンの切り裂き魔」事件。なぜその事件を選んだかとシドニーに聞かれ、事件ファイルに入っていた写真、4番目の犠牲者のそばでたたずむ飼い犬スティーヴ(名優ネッド)の写真を差し出す。早速ジェッシイは4人の娼婦を切り裂き自ら自首して捕まった犯人のリチャードと面会し話を聞く。するとリチャードは3人は確かに自分の犯行だが、4人目は違うという。自分の作品である3人の殺人を冒涜されたので自首したと話す。事件を掘り返すジェッシイに不可解な妨害が起きたり、動機のある人物が浮上してくるが、はたして犯人は。

名優ネッドの名演技も見逃せない。輝くような美少女ジェニイ(マッケンジー・フォイ)も初々しく可愛らしい。

 

 

 

 

 

 

◎一級品のハードボイルド・サスペンス・ドラマ。トム・セレック入魂の作品。
ハードボイルド小説の巨匠ロバート・B・パーカー作「警察署長ジェッシイ・ストーン」シリーズの原作に魅了されたトム・セレックが、主演、製作総指揮も行っている。
主演のトム・セレックがいい。主人公ジェッシイ・ストーン、人生にくたびれて、アルコールが手放せない武骨な大男だが根は実直で心優しい。そんな彼も、圧力をかけてくる者や虚栄を張る者に対しては一転、抜け目のない反骨精神を内に秘めて反撃を開始する。重厚で渋みのあるドラマに出来上がっている。全体に暗く重い場面が多いが、セリフ、場面展開が緻密に計算されていて、クライマックスまで無駄のない構成になっている。派手な謎解き、こじつけたような推理もなく、逆にもの静かなトーンが洗練された心理描写を際立たせている。

◎原作者ロバート・B・パーカーの訃報を知って。
2010年1月、本屋で原作者ロバート・B・パーカー追悼の全集が並んでいて訃報を知った。彼の本は一冊も読んでいないが、この警察署長ジェッシイ・ストーン シリーズでその原作もきっと魅力的だろうなと思っていた。そしてたまたま何気なく借りたビデオ「アパルーサの決闘」の硬派で重厚な世界に魅了された。特典映像でこれもロバート・B・パーカー原作だと知り、納得。
この映画もトム・セレックと同様に、エド・ハリスが原作にほれ込んで主演から監督、製作、脚本までを手がけたらしい。素晴らしい出来だ。原作者R・B・パーカーの死去は非常に残念だが、これからも原作の益々の映画化を期待したい。

「Radiation」を「新鮮」と訳すのはいかがなものか(アメリカンホラーストーリー)

2016年7月9日からFOXチャンネルで始まった12話完結の海外TVシリーズ「アメリカン・ホラー・ストーリー:ホテル」。レディー・ガガ主演のエッジの利いたスタイリシュ・ホラー。映画「シャイニング」の雰囲気に凶暴な猟奇シーン、SEXシーンを満載したドラマで、ガガはゴールデン・グローブ賞女優賞を獲得。

このドラマについて、あるサイトで気になる書き込みがあったので確認することにしてみた。HDDレコーダーにまだ残っていたので第1話「危険なチェックイン」から観ることにした。すると第1話後半にその問題の場面が出てきた。

ロス市警の刑事ジョン・ロウ(ウェス・ベントリー)が娘スカーレット(シュリー・クルックス)と寿司店で夕食をとっていた。(以下「」内は日本語字幕、<>内は英語の発音)

スカーレット「これって日本のお魚?」<Shouldn’t we ask if any of this fish is from Japan?>
ジョン「なぜ?」<Why?>
スカーレット「新鮮?」(彼女は英語でハッキリと<Radiation(放射能)>と発音)
ジョン「ママに似てきた」(苦笑いしながら)
スカーレット「用心しなきゃ」

つまり日本語字幕だけでストーリーを追っていくと、日本から輸入した魚なので客の口に入るまで時間がかかっている。娘は新鮮かどうかが気になる。父親は母親の食に対する心配性を娘の中に見いだして苦笑い。娘は用心は必要よと父親に返す。

また同サイトでは「Radiation」は「発光」という意味で、寿司の「こはだ」や「あじ」などの「ひかりもの」を意味しているのだという強引な意訳意見もあった。「放射能」という意味ではないという意見だ。だがそれは無理筋というもの。ドラマの映像の寿司店で出されたメニューを見ると、「ひかりもの」は無い。赤身1貫、白身2貫、小エビ4貫、そして巻き5〜6巻だ。

メニューから父娘のセリフが成り立たなくなる。

「これって日本のお魚?」→「なぜ?」→「ひかりもの?(Radiation)」ここで会話が変わる。「おいおい、スカーレット。ひかりものなんか出てないじゃないか。お前の好きなものばかりのはずだよ」

  • おませで賢いスカーレットはFDAの「輸入アラート99-33」をWebで知っていた!?

この会話の原因となったであろう元を探ってみよう。
まず日本の農林水産省のHPに「米国による日本産食品の輸入規制について」というタイトルのページがある。

上記①のPDFの一部を抜粋してみよう。
米国FDA(アメリカ食品医薬品局)の「輸入アラート99-33」に基づく最新(2016年8月26日付け)の輸入停止品目が出ている。

次に上記②の外部リンクをクリックしてみよう。
すると米国保健福祉省HHSの下部組織であるFDAが出した「輸入アラート99-33:Import Alert99-33」の原文が表示される。
公表日(Published Date)は2016年8月26日。
輸入アラート名(99-33)は、
「Detention Without Physical Examination of Products from Japan Due to Radionuclide Contamination」

=「放射性核種汚染のため、理学的検査をする必要のない日本製品の阻止

Webリテラシーの進んでいる米国。食の安全に人一倍気をつかう母親の姿をそばで見ていて、おしゃまで好奇心の強いスカーレットがその理由をWebで探し「輸入アラート99-33」を探り当て、おりこうさんブリを父親にアピールしたかったとも考えられる。

テッドとコスモスとSFドラメディと

映画「テッド」、そしてその続編「テッド2」。ご覧になったあなたの評価は?

下品すぎる?、面白い?、セックスやマリファナなどを軽々しく扱いすぎている?、ブラックなシーンやセリフをうまくコミカルに処理している?、「お前はどうなんだ、管理人」、「私の評価? いいね!」

科学啓蒙TV番組「コスモス」は、有名なカール・セーガンがホスト役で登場し1980年に放送され世界的な大ヒット作となった。この続編が34年ぶりにナショナル ジオグラフィック チャンネルで作製され放映された。ご覧になられた方も多いと思うが、新ホスト役は天体物理学者のニール・ドグラース・タイソン博士。博士はNYにある米・自然史博物館に併設されているヘイデン・プラネタリウムの所長である。ご存知のようにこの博物館は世界最大規模で映画「ナイト・ミュージアム」の舞台にもなったところだ。博士はナショナル ジオグラフィック チャンネルの「スター・トーク」という番組でもホスト役をしている。この番組はヘイデン・プラネタリウムに毎回多種多彩なゲストを呼んで、「ポップカルチャーを科学する」という名目で軽妙で楽しいトークを放送している。

テッド」と「コスモス」とくれば勘の良い人は「セス・マクファーレンだな」と気づいただろう。そう、マクファーレンは「テッド」の監督・脚本・製作を手がけた人物。また新「コスモス」の共同制作者の1人でもある。番組「スター・トーク:アニメの科学」の中でマクファーレンをゲストに呼び録画対談をしている。受け答えのうまさや絶妙のユーモアを聞いていると非常に頭のいい才人だと思う。今後のハリウッド人の注目株だ。

  • 新「コスモス」のホスト役決定の裏側。

この番組で新「コスモス」のホスト役に自身が抜擢された経緯をタイソン博士が次のように語っている。

全米科学アカデミー(NAS:全米の科学、技術、医学の3大・学術分野の内の科学分野で最高峰に位置する学術機関)が科学啓蒙促進を目的にハリウッドと提携するためLAに支部を立ち上げた。その初会合にタイソン博士が出かけるとマクファーレンも来ていた。初対面だったが彼の作品を知っていた博士が声をかけると「近々ランチでも」と返してきた。その時は博士もハリウッド流の社交辞令と思い気にもかけなかったそうだ。ところが数か月後にマクファーレンから電話があり、「近くにいるからランチを」と誘われた。思いがけない誘いにとまどいながらも「OK!予定はガラ空きさ」と返答してしまった。何を話そうかとあれこれ迷いながら博士はランチに出かけた。すると逆にランチのあいだ中、博士はマクファーレンの宇宙についての質問攻めに遭うはめになった。「ビッグバンはいつ?温度は?爆発の痕跡は残っている?」等々。まるで宇宙論を学ぶ学生のようで、よほど宇宙が好きなんだなと博士は思ったそうだ。そして半年後、その時に話したことが新「コスモス」のエピソードの1つになっていたそうだ。

タイソン博士(宇宙物理学)は2005年8月にドナルド・ゴールドスミス博士(天文学)との共著で「宇宙 起源をめぐる140億年の旅」という最新の宇宙科学に関する解説書を著している。読みやすくユーモアあふれる内容だ。この本の帯にはミチオ・カク博士(NY市立大学シティーカレッジの物理学教授)の賛辞のほかに、パブリッシャーズ・ウィークリー誌の賛辞にこうある、「20年以上前にでたカール・セーガンの「コスモス」以来、本書ほど最新の知見にあふれ、とっつきやすく、読んで愉しい一般向けの宇宙論書はなかった」とある。

タイソン博士は新「コスモス」番組のホスト役に抜擢されるとは思っていなかったようだが、マクファーレンの方はホスト役を誰にするか。専門知識があり分かり易く説明でき、しかもユーモアがあって親しみやすい人物を探していたのだろう。本著の訳者あとがきをみると、博士は既に合衆国の宇宙政策を諮問する大統領委員会のメンバーであることや、芸能雑誌上で「存命中の最もセクシーな宇宙物理学者」にも選出されていた。マクファーレンもその辺の調査をした上で、専門分野と一般視聴者とのかけ橋役の最有力候補として絞り込んでランチに誘ったのではないかと想像する。

  • 才人セス・マクファーレンの傑作「ファミリー・ガイ」。

番組「スター・トーク:アニメの科学」の中で、マクファーレンが手がけた過激ギャグアニメ「ファミリー・ガイ」の何本かが紹介されている。すごく面白いのだが、人によっては過激すぎるかもしれない。「テッド」に通じる笑いがあるのでぜひ観てみたいと思い海外TV放送チャネル探してみたが、放送しているチャネルはなさそうだった。

このアニメに出てくる性悪で高い知能を持つ赤ん坊ステューウイー(映像的には3、4才児に見える)と、人間のように立ち振る舞いをして人語を流暢に話す犬ブライアンとが、かなり高度な科学ネタのギャグを展開する。ギャグに感心したタイソン博士はマクファーレンにアイデアの源泉について聞いてみた。彼は小さい頃、科学の成績は良くなかったが科学に興味を持ち、「ファミリー・ガイ」の原型は美術大学時代に作っていたようだ。

番組で放送されたアニメを紹介してみよう。例えば過去に戻り過去のブライアンに悪さをしようとするステューウイー。それを察知したブライアンが阻止しようと争っているうちに時空移動装置が壊れてしまい、時空連続体の外に放り出されてしまう話。さわりだけなのでどうやって元の世界に帰ったのかが気になる。別の話では「新スタートレック:ネクスト・ジェネレーション(TNG)」の俳優たちを呼び出す転送装置を作ったステューウイー。声優はすべてTNGに出演した本物の俳優が吹き替えをしている。ピカード艦長役のパトリック・スチュワートが「ここはどこだ?」と強制転送に不機嫌そう。呼び出したとたんに断わりもなく発言したという理由で保安部長ターシャ役のデニーズ・クロスビーはステューウイーに光線銃で殺されてしまう。撮影現場の状況を嬉々として質問するステューウイーにクリンゴン人保安部長役マイケル・ドーンが「撮影は楽しかったがパトリックが目立ちすぎだ」とこぼす。「15年も経つのにまだ反抗するのか」とスチュワートが呆れる。「ウーピーとヤった?」というステューウイーの質問に「飽きるほど」と答えるスチュワート。真面目な声音でここまで言うかと大笑いだ。

そして笑うよりうーんと呻ってしまった話がある。ステューウイーが犬のブライアンを小馬鹿にしたように言う「多元宇宙を知ってる?」。「当然さ 君こそ知ってるのか」とブライアンが言い返す。見え透いた嘘を言うなと言い争いになる。

そしてステューウイーが見せてやるよと手に持った多元宇宙移動携帯装置のスイッチを押す。2人(正確には1人と一匹というべきか)が移動した先は同年同時刻の2人が住む他の並行宇宙。しかしそこは1000年以上も科学文明が進んでいる。人々は反重力制御で浮遊通勤していて天空にそびえるビル群が林立している。ステューウイーがその理由をこう説明する、「キリスト教が生まれなかったので、科学の暗黒時代がなく文明が1000年も進んだ」のだと。タイソン博士もサブ・ゲストの2人(対談相手がメイン・ゲスト。そして毎回コメディアンと専門分野の学者がサブ・ゲストで呼ばれる)も「ここまでやるか」と驚いていた。

マクファーレンは来年、2017年から2018年にかけてドラマとコメディが融合したSFドラメディ・シリーズを放映するという。楽しみだ。

  • 定番科学イメージ。重力は他の力に比べあまりにも弱い。

米では高度で最先端の科学知見を子供たちや一般の人々に分かり易く解説して普及しようとする考え方が根付いているように思う。「コスモス」や新「コスモス」のように洗練された大作科学宇宙番組の制作。ディスカバリーチャンネルの「モーガン・フリーーマンが語る宇宙」シリーズ、ヒストリーチャンネルの「アルカリーリ教授のサイエンスレッスン」シリーズ、そしてナショナル ジオグラフィック チャンネルの「スター・トーク」シリーズのように、有名なハリウッドスター、高名な英・理論物理学者や米・宇宙物理学者がホスト役となり、ビッグバン、量子力学、ひも理論、並行宇宙、生命科学などの最先端科学を、洗練されたCGやアニメ、美しい映像を駆使して解説してくれる。

お恥ずかしい話だが、当初管理人はこれら科学啓蒙番組に出てくるホスト役の科学者は外国の三流の学者たちだと思っていた。番組内容も分かりやすく、なるほど、なるほどと分かったつもりでいた。しかしビッグバンやひも理論、M理論、インフレーション理論などのつながりを理解できていなくて、それぞれの科学者が想像力をたくましくして突飛な仮説を発表し合っているのだなあ、と浅はかな理解をしていた。これらの科学番組はだいたい約40〜50分間の中に高度な科学理論をイメージ圧縮して構成されている。当然圧縮を解くと膨大な内容が含まれており、伝えきれず省かれた重要な科学知識もある。

そこで番組で放映された分野の関連著書を購入(専門書や科学解説書類は高いのでまず古本屋を探すのだが)。すると「あれ?この著者、どこかで見た気がするが?」。なんと上記チャネルで放送された番組にホストやゲストで出演していた学者さんたちじゃないか。浅学の管理人が勝手に三流と思っていた教授や学者の人たちだと分かった。三流どころか超一流の学者さんたちだった。しかも常識から遠く外れたSFストーリーのような多次元宇宙や泡宇宙といった仮説も、ちゃんと科学的根拠をベースとしたものであるということがようやく分かってきた。

ここで気づいたことがあるのでご紹介したい。

その前に「定番科学イメージ」について説明をしよう。この「定番科学イメージ」というのは管理人がこれらの番組や著書を視たり読んだりしているうちに思いついた言葉だ。例えば一般相対性理論で重力レンズ効果などを説明するときによく使われる「光が曲がる」という場合。4次元空間をトランポリンの布のようにピンと張った2次元の布に例え、そこに太陽などの大質量の球体を置くと凹みができるという分かりやすい「イメージ」。今では相対性理論を説明したり紹介したりときには必ず出てくる「定番科学イメージ」だ。

この「定番科学イメージ」がひも理論やブレーン宇宙論の説明の時に番組や著書に出てくる。

標準モデルで統合された、自然界の4つの力のうちの3つ、電磁気力、弱い力、強い力。だが重力だけは量子論に組み込まれることを拒み続けている。なぜそうなのかは素人の管理人には分からない。しかし科学者たちは重力が他の力に比べ極端に弱いからだという。「え?そうなの?どういうこと?」と思ってしまう。例えば電磁気力は重力の「100億倍の、そのまた100億倍の、そのまた100億倍のさらに10億倍も強力」(10の39乗倍!)だという。これはヒストリーチャンネルで放映された番組「驚異の高次元空間」の中でホスト役のブライアン・グリーン教授(コロンビア大学・超ひも理論研究で有名)が説明してセリフだ。

そして「地球に引っ張られて地面に落ちた鍵に小さな磁石を近づけると、簡単に引き寄せてしまう」というイメージ映像。巨大な地球の重力に小さな磁石が簡単に勝ってしまうという説明映像である。

同じようにリサ・ランドール博士(ハーバード大学物理学教授。プリンストン大、MIT、ハーバード大で終身在職権を持つ初の女性教授!)の著書「ワープする宇宙」(25頁)

やNewton別冊「次元とは何か」の「第5章 ランドール教授に聞く」(135頁)にも「小さな磁石が地球の重力に打ち勝ってクリップを引き寄せる」というイメージの描写がある。この「磁石とクリップ」のイメージで「弱すぎる重力」について説明している。つまり「定番科学イメージ」である。

彼女はディスカバリーチャンネル「モーガン・フリーーマンが語る宇宙」シリーズの番組「多次元の世界」にも出演していて、重力だけが他の3つの力に比べ極端に弱いという謎を、ヒモ理論を使って、並行宇宙の他のブレーンとをつなぐ余剰次元に自由に拡散する閉じたヒモであるためと説明している。

ワープする第一下僕トーマス(ダウントン・アビー)

:Warping the first servant,Thomas.(From Downton Abbey)

「社交界」第9話 シーズン4
(Episode 4.09 – 2013 Christmas Special)

20世紀初頭、イングランド北東部の大邸宅「ダウントン・アビー」に居を構える貴族グランサム伯爵一家とそこで働く使用人たちを中心に、激動の時代とともに衰退していく英国貴族社会の人間模様を描いた英国TVの大河ドラマ。昨年(2015年)シーズン6でファイナルシーズンを迎え放送を終了した。エミー賞、ゴールデン・グローブ賞など数々の賞を受賞した良質のドラマ・シリーズである。

魅力はたくさんあるが、筆者が特に感心したのはシナリオ・バランスの良さだ。登場人物が多いにもかかわらず、各話とも主要人物がバランス良く登場して各々が抱える問題や話題を織り込んでストーリーが進んでいく。ほかのTVドラマでは1話完結型が多いので、毎回多くの登場人物を出演させるとストーリーが発散して分かりにくくなってしまう危険がある。普通1プロットで1話完結が常道だが、中にはサブ・プロットを少しからませるストーリーもある。いずれにしてもドラマの見易さ、分かりやすさ、面白さはシナリオをどれだけ十分なほど練り込むかであろうと思う。その点ダウントン・アビーは毎回見応えがあり、面白いトリビアなど起きないだろうと思っていた。ところがである。なんとXメンやヒーローズに出てくるようなワープ能力を第一下僕トーマスが見せてくれた。

ト-マスは容姿端麗だが自己中心的で野心家。仲間である他の使用人を見下して人の足を引っ張ったり、陰口を吹き込んで広めたりする策謀家である。

第9話はローズ(伯爵の従妹の孫娘。事情があってダウントン・アビーで暮らしている)の社交界デビューを中心に様々なストーリーが展開する。伯爵一家と大半の使用人たちはローズに付き添ってロンドンのグランサム・ハウス(伯爵のロンドン別邸)に移動する。ダウントン・アビーにはブランソン(伯爵の亡き三女シビルの娘婿)とト-マスが留守番として残った。ダウントン(ドラマ設定ではヨークシャー)とロンドンでは300km以上離れている。

●ワープ場面はドラマの後半で起きた。ロンドンのグランサム・ハウスの使用人たちの食堂兼休憩室の場面で、執事のカーソンが伯爵夫人コーラの厚意で外出が許されてので一緒(使用人たち)にロンドン見物に出かけようと提案する。その話を聞きながら使用人たちが各自の席についたり食事の皿を準備したりしている。その横でワープしたトーマスが澄まして立っているのだ。カーソンが科学博物館やクリスタル・パレスなど自分の行きたい所を列挙し始めて皆があきれてしまう。カーソンが「王立科学研究所はどうかね」とトーマスに訊ねた。ダウントンからワープしたトーマスは黙って佇むだけ。カーソンがようやくその場の白けた空気に気がついて「まあ検討することにしよう」と部屋を出て行った。

その後すぐにトーマスはダウントン・アビーへワープ。トム・ブランソンの外出のお供をするためだ。トムの弱みを掴んだと慢心したトーマス。トムと並んで後部座席に乗りたいとほのめかす。無礼な態度のトーマスに、「私が伯爵だったら隣に座れるか」とトムは強い口調で言った。トーマスは渋々諦めた。

●The warping scene happened in the second half of the drama. At the scene of a cafeteria and a break room of servants of Grantham House in London, Carson of the butler proposed to go out for sightseeing to the people (servants) with the goodwill of the Countess Cora being allowed to go out. While listening to his proposal, the servants are on their own seats and preparing meals dishes. Thomas warped from Downton is standing calmly sideways. Because Carson enumerated the science museum and Crystal Palace etc where he wanted to go, everyone was dumbfounded. Carson asked Thomas, “How about the Royal Institute of Science ?”. Thomas only stood silent. Carson finally noticed the ruined mood of the room. He said, “I will consider it”, and went out of the room.

After soon Thomas warped to Downton Abbey. The reason is to accompany Tom Branson’s going out. Thomas was proud. He thought that he held Tom’s weak point. He hinted, “I wants to ride the back seat side by side with you”. Tom harshly told Thomas in a rude manner, ” If I am the Count Crawley, can you sit side by side ?”. Thomas reluctantly resigned.

なぜこんなトリビアがおきたのか。時系列ではなくランダムで撮影し後で編集してつなげたのだろう。普通ならトーマス役のロブ・ジェームス=コリアーが気づいているハズだ。「私はダウントン・アビーで留守番をしているので、ワープ能力を発揮しない限り、ここのグランサム・ハウスの場面には立ち会えないと思います」とユーモアを交えながら監督にクレームを出したことだろう(筆者の想像だが)。まあご愛嬌である。