2016年7月9日からFOXチャンネルで始まった12話完結の海外TVシリーズ「アメリカン・ホラー・ストーリー:ホテル」。レディー・ガガ主演のエッジの利いたスタイリシュ・ホラー。映画「シャイニング」の雰囲気に凶暴な猟奇シーン、SEXシーンを満載したドラマで、ガガはゴールデン・グローブ賞女優賞を獲得。
このドラマについて、あるサイトで気になる書き込みがあったので確認することにしてみた。HDDレコーダーにまだ残っていたので第1話「危険なチェックイン」から観ることにした。すると第1話後半にその問題の場面が出てきた。
ロス市警の刑事ジョン・ロウ(ウェス・ベントリー)が娘スカーレット(シュリー・クルックス)と寿司店で夕食をとっていた。(以下「」内は日本語字幕、<>内は英語の発音)
スカーレット「これって日本のお魚?」<Shouldn’t we ask if any of this fish is from Japan?>
ジョン「なぜ?」<Why?>
スカーレット「新鮮?」(彼女は英語でハッキリと<Radiation(放射能)>と発音)
ジョン「ママに似てきた」(苦笑いしながら)
スカーレット「用心しなきゃ」
つまり日本語字幕だけでストーリーを追っていくと、日本から輸入した魚なので客の口に入るまで時間がかかっている。娘は新鮮かどうかが気になる。父親は母親の食に対する心配性を娘の中に見いだして苦笑い。娘は用心は必要よと父親に返す。
また同サイトでは「Radiation」は「発光」という意味で、寿司の「こはだ」や「あじ」などの「ひかりもの」を意味しているのだという強引な意訳意見もあった。「放射能」という意味ではないという意見だ。だがそれは無理筋というもの。ドラマの映像の寿司店で出されたメニューを見ると、「ひかりもの」は無い。赤身1貫、白身2貫、小エビ4貫、そして巻き5〜6巻だ。
メニューから父娘のセリフが成り立たなくなる。
「これって日本のお魚?」→「なぜ?」→「ひかりもの?(Radiation)」ここで会話が変わる。「おいおい、スカーレット。ひかりものなんか出てないじゃないか。お前の好きなものばかりのはずだよ」
- おませで賢いスカーレットはFDAの「輸入アラート99-33」をWebで知っていた!?
この会話の原因となったであろう元を探ってみよう。
まず日本の農林水産省のHPに「米国による日本産食品の輸入規制について」というタイトルのページがある。
上記①のPDFの一部を抜粋してみよう。
米国FDA(アメリカ食品医薬品局)の「輸入アラート99-33」に基づく最新(2016年8月26日付け)の輸入停止品目が出ている。
次に上記②の外部リンクをクリックしてみよう。
すると米国保健福祉省HHSの下部組織であるFDAが出した「輸入アラート99-33:Import Alert99-33」の原文が表示される。
公表日(Published Date)は2016年8月26日。
輸入アラート名(99-33)は、
「Detention Without Physical Examination of Products from Japan Due to Radionuclide Contamination」
=「放射性核種汚染のため、理学的検査をする必要のない日本製品の阻止」
Webリテラシーの進んでいる米国。食の安全に人一倍気をつかう母親の姿をそばで見ていて、おしゃまで好奇心の強いスカーレットがその理由をWebで探し「輸入アラート99-33」を探り当て、おりこうさんブリを父親にアピールしたかったとも考えられる。