- 東電はトリチウム水族館を設置し風評被害対策に使うらしい。科学検証のできない東電に海洋放出させてはいけない。
2021年4月17日の朝日新聞デジタルの記事。
東電が原発敷地内に水槽か生け簀を設置し、トリチウム水で満たした水槽で魚を飼うらしい。トリチウムの安全性を検証し、風評対策に役立てる狙いらしい。
元気に泳いでいる魚の姿を見せて安全だとPRするのだろうか?
それとも実はトリチウム汚染水ではない安全な水で飼育するのだろうか?
トリチウム水で飼育して魚介類に放射能の影響が出て危険であるという研究論文(1981年)があることを知っての東電の発表だろうか?
それとも知らずに「トリチウムは本当に安全」と信じ込んでいる東電上層部の思い付きアイデアだろうか?
- トリチウム水で飼育された魚介に放射能の影響が出たことを証明した研究がある。
「水生生物に対するトリチウム水の影響」須山一兵、江藤久美(放射線医学総合研究所)両氏による1981年の研究論文で、日本原子力学会誌に発表されたものである。
1979年のスリーマイル島事故の2年後、1986年のチェルノブイリ事故の5年前の研究である。
下図の写真は、当該論文の一部で紹介されているもので、トリチウム水と清浄水にクサフグの受精卵を入れて飼育孵化した実験結果である。
トリチウム水で孵化した稚魚群には、清浄水群に比べ次のような形態異常が見られた。
・魚体が小さい。
・腹部が膨出した個体。
・平均眼径が約1/2小さい。
下図の赤字①はニジマスによる同様の実験で、「・・眼や体の重篤な奇形を含む奇形魚の有意な増加が観察された」と紹介されている。
(「水生生物に対するトリチウム水の影響」須山一兵、江藤久美)
下図の写真も同様、トリチウム水と清浄水にメダカの受精卵を入れて、受精直後から胞胚期まで飼育後、精巣重量を比較したもの。
トリチウム水で孵化した受精卵の精巣重量は、清浄水群に比べ、42%、37%の顕著な減少が見られたとある。
(「水生生物に対するトリチウム水の影響」須山一兵、江藤久美)
この研究論文の著者両氏は、論文の「おわりに」で次のように結んでいる。
①環境中に放出されるトリチウムの増加、生体への容易な侵入、放射線影響など、懸念。
②FWT(自由水中のトリチウム)は体外排出も早く、そう心配することはない。しかしOBT(有機結合型トリチウム)はタンパク質やDNAに組み込まれているため、体内増加は緩やかだが、排出は非常に遅い。
③トリチウムは低い濃度でも生殖細胞や免疫などにも大きな影響を与える。魚類において、γ線が生殖細胞数を50%減少させる線量を1とすると(RBE:Relative.Biological.Effectiveness、生物学的効果比)、トリチウムの放出するβ線は約2.0〜2.4倍である。
④トリチウム廃液の安全な処理方法が確立されることを望む。
(「水生生物に対するトリチウム水の影響」須山一兵、江藤久美)