ウクライナ危機PARTⅥ ロシア軍の対生物化学兵器の除染方式は「高温焼却」。攻囲されたマリウポリなどで使われたら証拠保全はできないだろう

ディスカバリーCH「徹底検証!ロシア軍の秘密 核科学部隊」から

(N:Nuclear核、B:Biologial生物、C:Chemical化学)

  • 「細菌も有害物質も一気に焼き尽くす」この除染方式がロシア軍NBC部隊のやり方

生物兵器や化学兵器で敵を制圧しても、汚染された地域になってしまって進軍・侵入できなければ完全勝利とはいえない。除染して無毒化しなければ占領できない。そこで生物も有害物質も高温で焼き尽くせば短期間で無毒化できると気が付いた。
火炎放射器。小型で効率的な火炎放射器の開発。燃料気化爆弾の進化版、サーモバリック爆弾が登場した。

  • ロシア軍NBC部隊の火炎放射武器と装備・兵器

<LPO火炎放射器 歩兵隊用軽量モデル>
グレネード型サーモバリック弾4発装填可能。ポンプアクション式。
殺傷範囲 半径3m。

<MPO-A火炎放射器 コードネーム“Borodach”ひげ男>
サーモバリック爆薬のロケット弾を発射。
後方噴射がないので室内などの閉鎖空間からも発射可能。
市街戦用に適している。
建物内に隠れている人間もろとも焼き払う威力がある。

<PRO PDM-A火炎放射器 コードネーム“Prize”賞金>
コードネーム“Shmel”(マルハナバチ)型の後継機の小型版だが、有効射程が伸びて重量も2kg軽量化。
有効射程1700m。
サーモバリック爆薬のロケット弾を円筒に入れて、ロケットランチャーに装填。発射するとロケット弾が飛び出し、そのあと円筒が後追いで排出される。有効射程と命中精度が向上。

<NBC火炎放射器分隊>
8人編成。各自が火炎放射器とアサルトライフルを装備。
8人乗車可能な装甲車両BMO-T(T-72車体ベース)。
BMO-Tには、15セットの砲弾と重火炎放射器、12.7mm口径のコルド重PKM機関銃の兵装。車体にはNBC防御装置が施されている。

<特殊RHM化学調査用装甲偵察車>
放射線、数千種類の毒物、土壌汚染などを調査分析する様々な装置やセンサーを装備したBTR-80装甲兵員輸送車から派生した車両。
生物兵器、化学兵器を自動検知したり、有毒物質の種類や量を測定したりできる。他にも遠距離から放射線と化学物質を調査できる装置もある。レーザー光を照射してその屈折角度から化学物質の種類と量を特定することもできる。最長2km、約1500種類の有毒物質を特定可能。
特定調査したら、信号弾を打ち上げ車外に出ずに、「Toxic Hazard」(有毒 危険)と書かれた黄色い旗を、汚染領域に突き立てる。

<AMS-701システム除染車>
汚染地域を調査して帰ってきた特殊RHM装甲偵察車を、当除染車2台で除染する。1台は右側、もう1台は左側から高温ジェットと特殊な除染液を噴霧する。
噴霧器はチェコ製ジェットエンジンM701が使われている。

<重火炎放射器システム TOS-1A 多連装ロケットランチャー>
サーモバリック弾頭のロケット弾を24発装填できる多連装ロケットランチャー。
T-72車体に24基の発射管を装架、装填車TZMから約1時間かけて装填完了。
射程6km。24基を発射すると4万平方m、フットボール場8面を焼き尽くすことができる。

<サーモバリック爆薬・ロケット弾の爆発の仕組みと効果>
サーモバリック爆弾は段階的に爆発する。
①着弾するとMRVU着発信管が小型爆弾を爆発させる。
②爆発燃焼剤が散乱拡散して粒子の雲を形成する。
③すぐに次の爆発で粒子の雲が発火する。

その時の爆発効果は
・高温の火の玉が発生、周辺が焼き払われる。
・火の玉の中心に高圧域ができ、建物や人間は破壊され、浅い防空壕は天井が押し潰される。
・粒子の雲が燃え尽きると爆風が発生し、建物や人間はバラバラに吹き飛ぶ。

  • 化学兵器を使って制圧し、すぐに除染と称して焼き払う。証拠は残らない。欧米は化学兵器使用を証明できない

ウクライナ南東部とクリミヤを結ぶ回廊の拠点、マリウポリ。ロシア軍は早く制圧占領したいが、アゾフ連隊の頑強な抵抗でなかなか落ちない。いらだつプーチンとしては、NBCの大量破壊兵器を使ってでも手っ取り早く落としたいところだろう。

<短編小説「プーチンの逡巡と決断」>

核兵器使用は欧米の反発がすさまじいと予想されるし、使用して占領できたとしても放射能汚染地帯ができ軍の行動が制限される恐れがある。最後の手段にすべきだろう。

生物兵器はコントロールが難しい。自軍にも感染が拡大する恐れがある。
ここは化学兵器だな。
マスタードなどのビラン剤は皮膚症状などの証拠が残るし即効性がない。やはり早くマリウポリを占領するには、即効性のある神経済がいいが、サリンやVXは取り扱いが難しい。
やはり「混ぜると危険」、逆に言えば「混ぜなければ安全」なバイナリー化学剤「ノビチョク」にするか。

使用後の後始末は、広域汚染地帯はTOS-1Aで焼き払い、あとは火炎放射器分隊を投入して、焼却漏れがないようにするのがいいだろう。

外向けには「ウクライナのナチが化学兵器を使い市民を虐殺しているので、ナチ部隊への攻撃と同時に、汚染された地域の除染・無毒化を図り焼却を行った」と発表しよう。

欧米もウクライナもマリウポリには一歩も入れさせない。入れなければ証拠を保全することもできない。証拠がなければハーグ(国際刑事裁判所)に訴えられてもどうってことはない。