2019.9.20公開記事
●安倍の狙いが分かった!進次郎人気で国民を誤魔化して、福島トリチウム汚染水の海洋放出を強行するつもりだ。
2019年9月17日、日本維新の会代表で大阪市長の松井が突如、とんでもないことを言い出した。
「将来、総理を期待されている人が<所管外だ>とか、そういうことで難しい問題から批判をそらすようなのは非常に残念だ。真正面から受け止めてもらいたい」と、約960基のタンクに溜まり続ける福島第一の汚染水の「海洋放出」を決断しない小泉環境大臣を批判した。
(この男、IR誘致が横浜に取られないよう安倍一派にゴマをすったのかも。朝日新聞DIGITAL 2019.9.17)
- 汚染水の海洋放出は、既に安倍政権では決定事項であった。進次郎が大臣エサに食いついた。自業自得である。
経緯をみれば歴然である。
2016年
・汚染水処理について、海洋放出、地層注入など5種類の処分方法について公聴会開催。「第6の選択肢」として「貯蔵継続」が公聴会出席者から挙げられたが、複数の委員が否定的見解を示した。
2018年
・8.30-31:資源エネルギー庁の説明公聴会で海洋放出が合理的と強調する資料が配布。
・10.1:政府有識者会議で、処理済み汚染水にトリチウム以外の放射性物質が残存していることが判明、東電謝罪。
・12.13:東大・福島大による消費者アンケート回答:海洋放出に反対がほぼ半数。海洋放出後の福島産海産物を「購入したくない」26.4%(倍増)、検討会議中断。「貯蔵継続」議論、棚上げ。
2019年
・8.9:政府有識者会議で東電が、汚染水の敷地内での継続保管に難色。委員から資料等が不十分と東電を批判。委員の1人は「風評被害を抑えるために処理水をため始めたのだから『敷地が足りなくなったから処分する』という話にはならない」とくぎを刺した。
つまりドツボにはまってしまった汚染水処分問題。
1.トリチウム除去だけでも莫大な費用がかかる。汚染水を海洋放出するには、トリチウム以外の核種を取り除く再処理も必要である。
2.廃炉作業だけでも莫大な費用がかかっており、政府も東電もこれ以上汚染水の長期保存に金をかけたくない。
今後も、米へのご奉仕、宇宙軍など日本の防衛費に税金を傾斜投入したい安倍にとって、汚染水処理に税金を削られたくない。強引に海洋放出しても非難をあびない妙案はないか?
そこで小泉進次郎・環境大臣の誕生というカード。このカード、安倍支持率も上がり、「進次郎さんがそういうなら海洋放出もいいんじゃない」というミーハー期待。ただし進次郎が放出に反対すれば、タンクの敷地確保・増設の問題が発生し、それは進次郎の責任になる。反対するハズがない、と踏んだ。
そこで念押しに、進次郎に海洋放出が政権の考えであることを分からせるよう仕掛けを打った。
2019年
・9.10:原田・前環境大臣が退任時の記者会見で最後っ屁「汚染水は海洋に放出して希釈する他に選択肢はない」。この発言に地元漁業関係者らが猛反発。
・9.11:小泉環境大臣就任時、前任者の最後っ屁について問われ「所管外」として逃げを打つ。
・9.12:いい格好をしたい新大臣の進次郎が、福島に飛び漁業関係者に謝罪。処理の具体策には言及せず。
前任大臣が退任時にわざわざ猛反発覚悟で政権の方向性を示したのに、空気を読まない進次郎。これまでの汚染水問題の政府の取り組みを勉強していれば、「できる限りの処理をして海洋放出する選択肢も考えるべきかもしれない」と、若いが物わかりがいいから忖度して適当に言うだろうと思った安倍たちは当てが外れあわてた。
そこで維新の松井が呼ばれた。政権幹部が言うとまずいので、松井からストレートに分かるように「逃げずに放出を決断せよ。福島地元での放出に抵抗が大きいなら大阪でまずやってもいい」とメッセージを送ることを、陰謀大好きな安倍らから頼まれ引き受けたのだろう。もちろん関西の多くの関係者から反発を受けることは必至なので、松井がタダで引き受けるわけがない。多分、横浜IR誘致の件もあるので、大阪へのIR誘致への後押しをバーターで提示した可能性は考えられる。
・9.17:松井・大阪市長「処理済汚染水は海洋放出すべき、大阪湾での放出も可能」と言及。
松井のメッセージを聞いて、進次郎もようやく気付いたのか、「(松井さんと)会う機会があれば考えを聞いてみたい」とコメントしている。
このタイミングで、松井(日本維新)が汚染水問題に、何の見返りもなく突如首を突っ込む偶然はありえない。
- 放射線が生物に及ぼすリスク。
この本「プルトニウム」の著者は、「核戦争防止国際医師会議+エネルギー・環境研究所」である。
核戦争防止国際医師会議は、核兵器廃絶を求める医師たちの世界的組織。政治的に不偏不党の組織として、冷戦さなかの1980年発足。核戦争の医学的影響に関する研究・教育活動が認められ、1985年にノーベル平和賞を受賞した。現在、83か国、会員数約20万人。
その中の放射線生物学(radiobiology)の引用から簡単に説明する。
空気中では、α線は数cm、β線は数十cm、γ線は数十m進む。危険なのは内部被ばくの場合である。人体内を透過する時、細胞を構成する原子に衝突し、電子や原子核を吹き飛ばし電離することになる。飛ばされた粒子がまた他の原子を電離する。電離された原子を含む分子や化合物は瞬時に分解する。
運悪く衝突された原子が遺伝子の一部だった場合は、遺伝子の破壊か損傷が起きる。
ただ遺伝子は細胞の体積全体からみれば、ごくわずかだから確率的には遺伝子の損傷等は少ない。人体の大部分は水分。放射線の多くは細胞内の水と衝突して電離が起き、非常に反応性の強いイオンや、水素と酸素の不安定な化合物が発生する。これにより細胞内に様々な悪影響が起き、細胞が破壊されたり、細胞の機能が損なわれたりする。
だが体には修復機能があるので、放射線量が少ない場合は電離作用の影響は少なく、修復機能が高ければ放射線の悪影響は少なくて済む。ただ稀に放射線により細胞分裂に異常を引き起こす場合があり、その場合は癌になる可能性がある。
一般的に地球の生物は、自然放射線「バックグラウンド放射線」の中で生きている。ラドンや人工放射能(放射性降下物や医療用X線)の影響を除外すると、海抜ゼロmで1ミリシーベルト/年程度である。死亡原因の約20%は癌によるものと言われている。ほとんどの癌は放射能以外の原因でも発症するが、バックグラウンド放射線によるリスクも可能性として捨てきれない。
低線量被ばくでも、癌リスクがあるとされている。つまり「この線量以下なら安全」といえる量はない、という内容の報告「BEIR-Ⅶ」を米国科学アカデミー(NAS:米国の最も権威ある学術機関の1つ)が発表している。
放射線を浴びることで細胞内に発生した有害な化合物を、人体機能が修復・解毒するために、代謝が活性化されることは確認されている。だがそれはあくまでも人体が防御するために働いたことであり、体に良いことではない。体に無用の負担をかけることである。長期に低レベル放射線を浴び続ければ、体に慢性疲労や頭痛、めまいや代謝機能の低下、癌化リスクも確率的に高まる。動物・植物・微生物由来の毒物の毒性と素粒子レベルの放射線の人体への悪影響は根本的に違うものだ。
- トリチウムは悪魔の放射性核種。大気循環と食物連鎖により、人間にトリチウムが濃縮されていく。
<トリチウムとは>
水素は、H(電子+陽子)、重水素(D=デューテリウム:電子+陽子+中性子)、三重水素(T=トリチウム:電子+陽子+2中性子)などの、主な同位体が存在する。自然界での存在比は、H(99.985%),D(0.015%)、T(ほぼ0%)。
つまり、トリチウムは自然界にはごく微量にしか存在しない。HとDは放射能がない安定同位体だが、トリチウムは、中性子がβ崩壊(電子放出)する12.4年の半減期を持つ放射性同位体である。
よってトリチウムは、約12年で1/2、約24年で1/4、・・と減少していく。通常ほぼ無害となる年数(1/2^10=1/1024=0.000977)となるには、12年×10倍=120年とされる。
松井が言う、「科学的根拠に基づく自然界の安全レベルに達した汚染水を海洋放出する」とは、
「現状のタンクに貯留している汚染水を、トリチウム以外の放射性核種を再処理して取り除き、トリチウムだけになった汚染水を、約120年間タンクで保管した後、海洋放出しても問題ない」ということを意味する。
松井も維新(吉村、音喜多)も恥知らずな嘘ばかりを垂れ流さず、科学を勉強しなければいけない。
東電は「原発敷地内ではこの先3年で満杯になる」と海洋放出に誘導しようとしている。
<トリチウムによる体内被ばく>
トリチウムは体内にトリチウム水(HTO)として取り込まれやすい。我々が普段飲む水(H2O)とトリチウム水とは区別がつかないからだ。主に血液として体内を巡る。トリチウム水の生物的半減期は約10日とされる。(諸説ある。つまり運よく尿として出て行ってくれた場合である)
タンパク質やDNAは水素結合で構成される。血管から細胞内に取り込まれたトリチウムは、たんぱく質や糖や脂肪の有機結合体の構成要素(OBT)として固定されると、被ばくと障害の危険性が高まる。
トリチウムがβ崩壊すると、β線を放射しヘリウム3に壊変する。別の元素に変わるため、そのたんぱく質や糖は分解することになる。それがDNAならその部分が損傷する。β線は細胞内では1ミクロンほどしか飛翔しないが、そのトリチウムがDNAの構成要素になっていれば、近傍にDNAがあるので、β線によるほかの部分のDNA損傷も発生することになる。染色体異常、ガン化のリスクが高まる。
同様に血液中のトリチウム水のβ崩壊は、赤血球や白血球などを被ばくさせる。
人体の修復防衛機能が働くので、トリチウムが自然界に微量であれば問題は大きくはならないが、これが大量に海洋放出されると体内被ばくの確率が大きくなる。
<トリチウムは大気循環で飲料水として戻ってくる>
トリチウムが大量に海洋放出されると、「希釈されるから無害になる」そんなわけないだろう。希釈で放射能はなくならない。トリチウムは海面から水蒸気に含まれて蒸発し、大気や雲や台風に乗って、日本(もちろん日本だけではないが)の山々に降り注ぎ、川に流れ込み、貯水池・浄水場に貯留される。当然、浄水場でトリチウムを取り除くことはできない。
(推測だが、政府のトリチウム水タスクフォース設置(2013.12.25)時、JAEA(日本原子力研究開発機構)、東電などの関係機関のメンバーが会合し、その時にトリチウムについての情報共有のため、説明配布された資料と思われる。
2012年3月13日(SRNL:IMMEDIATE RELEASE)に、除染・廃炉に関する情報収集のため、東電等のメンバーが米SRNL(サバンナリバー国立研究所)等を訪問した際の資料と思われる英語資料も添付されている)
<トリチウムは海洋で生物濃縮される>
トリチウムは、水素結合による有機結合型トリチウム(OBT)として、たんぱく質や糖や脂肪に取り込まれることは上記で述べたとおりである。海洋には海水以外に様々な有機物が存在している。それらに水素結合でトリチウムが取り込まれると、海洋微生物によって濃縮される。微生物は小魚によって濃縮される。小魚はもっと大きな魚種に濃縮されていく。最終的には、地球上の食物連鎖の頂点に位置する人間に濃縮されていく。
- トリチウム関連被ばく事例。
1.NY州ロングアイランドの原子力関連施設の近隣住民にガンなどの難病が急増、トリチウムが敷地外に長期間漏れだしていたことが判明。NHK BS世界のドキュメンタリー「原子力大国アメリカ」2013.12.18放送。
2.エクセロン社(米国で原発を最多保有。スリーマイル島原発もこの会社)によるトリチウム・リーク訴訟。
イリノイ州シカゴの西南郊外、エクセロン社が保有するドレスデン、ブレイドウッド、ラサールの3つの原発が、南北約15km、東西約35kmの地域に立地している。これらの原発から出た汚水を近郊のデイ・プレインズ川に放出。汚水はトリチウムに汚染されていたが、NRC(米原子力規制委員会)は「国際基準以下なので影響はない」としてきた。しかし町では多くの子供たちがガンなどの難病で亡くなっていた。
NHK「低線量被ばく 揺らぐ国際基準 追跡!真相ファイル」2011.12.28放送.(原発推進3団体から抗議を受けた番組)
セーラ・ソウヤー(18才)さんは10年前、突然脳腫瘍を発症した。(トリチウムは脳の脂質に蓄積しやすいと言われている)。セーラさんは治療の後遺症で、18才現在、身長140cmほどしかない。
セーラさんが脳腫瘍を発症したのは、この町に引っ越してきて4年目だった。
母親のシンシアさんが語る。
「セーラはあの井戸の水をまいて遊び、食事をしていたんです」(トリチウムは皮膚からも吸収されることが判明している)
「病気になってからは、シカゴから水を取り寄せ、怖かったのでその水で、料理、皿洗い、歯磨きをさせた」
ガンと原発との関係を証明するため、ソウヤー夫妻は州政府から過去20年間の全住民1200万人の病歴資料を取り寄せた。小児科医で夫のジョセフさんが分析したところ、原発周辺地域(ドレスデン&ブレイドウッド)だけが、脳腫瘍・白血病が30%以上も高いことが分かった。さらに小児がんは2倍になっていることも判明した。
ソウヤー夫妻は、国に全住民の徹底した健康調査を求めた。しかし国は、「井戸水による被ばく量は年間1μSv(マイクロシーベルト)と小さく、健康を脅かすことはない」と回答してきた。
今日2019年9月19日、東電の旧経営者3人、勝俣元会長、武黒元副社長、武藤元副社長に無罪判決が言い渡された。この国は、高い給料と大きな権限をもつ人間ほど責任を取らなくなった。被害を受けるのは、米国も日本も下級国民だけである。原発関係だけでなく上級国民はいつも国や権力により守られている。
いつものように国民の多くは忖度TVメディアが増幅した松井の声に従うのか?
電力会社の身勝手な経済的合理性、愚かな政治家の政治的欲望、安倍の操り人形である芸人コメンテーターの無責任なコメントなど、安易で非科学的な理由で福島の汚染水を海洋放出すればどうなるか。
筆者は条件次第では、松井の声に従っても良いと思っている。条件とは、
松井市長や吉村知事や音喜多ら、維新の連中が安全と強調する汚染水を毎日飲んで実証してほしい。上記のセーラさんは4年後に脳腫瘍を発症している。4年間の実証で安全が担保されたら松井らの言葉を信じてもいい。