2017.9.3公開記事(2019.4.2加筆)
・2008年、レンタルビデオ店でたまたま借りた3部作。その出来の良さに感動。そして2010年、2半年ぶりにレンタルビデオ店で④話を発見。すぐさま借りて観賞。
さらに2016年、「4番目の真実」を発見。どうやら第9話にあたるようだ。まだ見ていない残りを探さねば。
・2017年、エアチェックしていたら、AXNミステリーで第1話から第8話まで放送するという。やったー!という感じだ。すこしずつ味わいながら視聴後の感想を書いていこう。
第1話:
おや?どうやら「影に潜む」のようだ。なぜパラダイス警察署長に採用された経緯が分かる「暗夜を渉る」から放送しなかったのか?まあジェッシー・ストーンの背負っている過去も十分解るし、愛犬レジーがなぜジェッシー・ストーンのもとに来たのかも判明する話なので気にすることはない。
◎シリーズ・タイトル
①話「暗夜を渉る」
②話「影に潜む」
③話「湖水に消える」
④話「訣別の海」
⑤話「Thin Ice(薄氷)」(2019.4.5追記)
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⑨話「4番目の真実」
シリーズは①、②、③の時系列だが、個々に完結したドラマになっている。どれから見ても楽しめるが、3話ともお決まりの約束事がある。意表つくクライマックス、署長の近しいものが亡くなるか負傷する、などとなっている。より面白く観るために、主人公を取り巻く人間関係が理解できているほうがいいので、順番にご覧なることをお勧めする。
◎ストーリー
①話「暗夜を渉る」
離婚で傷ついた、トム・セレック扮するジェッシイ・ストーンは、ロス市警を辞職し田舎町パラダイスの警察署長に採用される。アルコール臭を漂わせ、なんでも我流を押し通おそうとする。しかし実直に勤務するその姿に、眉をひそめていた署員も町の人も次第に信頼を寄せていくようになる。そんな折、殺人事件が起き、どうやら自身の署長採用に関係があるとみて捜査を始める。
②話「影に潜む」
町で射殺死体が発見される。それが発端となり無差別殺人事件が続発する。署長のジェッシイ・ストーンは捜査を開始するが、抜け目なく巧妙に立ち回る犯人を逮捕することがなかなかできない。警察への早期逮捕の圧力も高まる。
そこで尻尾を出さない犯人に対し、ジェッシイ・ストーンが誘いの罠をかける。
③話「湖水に消える」
足にブロックの重りを付けた未成年の少女の腐乱死体が浮かび上がり、岸辺で発見される。 学校、家庭、家出先を捜査していくと、容疑者が次々と浮かび上がる。ところが、真犯人の巧妙な計略が隠されていた。
④話「訣別の海」
署長ジェッシイを嫌い愚痴とひがみばかりを繰り返す部下のデアンジェロ。隙あらばジェッシイの足をすくおうとする。しかも若くて有望で目をかけ鍛え上げようとしていたスーツケースはスーパーの強盗事件で負傷し昏睡したまま入院中。人手不足の中、町のパトロールをして駐車違反のキップを切るジェッシイは、多忙な些事が続きアルコールが増えるばかり。医者の提言で、アルコールを忘れるために、没頭できる未解決事件を手がけることにした。窓口係を人質にとり逃走しわずかな金を奪って逃げた銀行強盗事件を手がける。人質はその後遺体で発見されたが犯人は未だつかまっていない。事件調書はずさんであまり役にたたない。関係者への聞き込みを始めると、不穏な男が付けてくるようになった。
⑤話「Thin Ice(薄氷)」(2019.4.5追記)
ジェッシイと州警察のヒーリー警部が車で張り込み中、突然銃弾を浴びせられる。重症のヒーリー警部は動かない。右腕を負傷したジェッシイは、とどめを刺そうと近づいてくる相手に銃で反撃、負傷した相手は驚いて逃げ出した。パラダイス署に戻ったジェッシイに、町の行政委員会のトップ、ハンソンから呼び出しがかかる。ハンソンは、退職したデアンジェロの後釜に、義理の息子バトラーを押し込もうとするが、デスクワーク経験しかないバトラー採用にジェッシイは難色しめす。頑固で従順でないジェシイに、解雇することもできるぞと権限を振りかざし脅すハンソン。警察署に関することについては、指図は受けないと返すジェッシイ。
署に戻ると、他州で起きた乳児誘拐事件の被害者である母親が捜索願いに来ていた。誘拐犯らしき人物からの手紙が届いて、それには「子供は愛されている」と記されていた。消印がここパラダイスとなっていた。
町の行政委員会からは「町の観光にマイナスとなる事件に首を突っ込むな、収入源となる駐車違反キップ切りに励め」と促される。「君が追い出したデアンジェロは違反キップ切りはトップだった、署長として好ましくない」と面と向かって嫌味を言われる。
わざわざ遠くから足を運んで乳児誘拐犯の捜査を依頼しにきた母親の願いを無視するのか、と部下から突き上げられる。昏睡状態から目覚めて通常勤務に復帰させたが、いまだ言動に不安定なところがみられるスーツケース。ジェッシイらを銃撃した犯人の手がかりや動機も皆目掴めない。ジェシイは深酒が多くなっていく。
この5話からは、前4つの話とは微妙に違うストーリー展開になる。愛犬レジー、ヒーリイ警部まではお約束どおりだが、横糸的な少女が絡む事件が無くなった。もちろんそれだけではないのだが、なにかタッチが違う感じがする。
⑨話「4番目の真実」
相棒レジーを失い、こころのすき間を埋め切れない署長ジェッシイ。深酒に頼ったり町を離れた女友達を訪ねたりするが解決にはならない。そこで未解決事件に没頭しようと考え州警察のシドニー警部補を訪ねる。捜査能力は優秀だが問題行動が多いことを知るシドニー警部補は、報酬は経費だけでいいので未解決事件を担当したいというジェッシイの申し出に戸惑うが、信用して未解決事件ファイルの束を渡す。案の定、翌日酒を飲みすぎて遅刻し、任せていいのかシドニー警部補は迷う。どうしても事件を担当したいと押し通すジェッシイが選んだのが、「ボストンの切り裂き魔」事件。なぜその事件を選んだかとシドニーに聞かれ、事件ファイルに入っていた写真、4番目の犠牲者のそばでたたずむ飼い犬スティーヴ(名優ネッド)の写真を差し出す。早速ジェッシイは4人の娼婦を切り裂き自ら自首して捕まった犯人のリチャードと面会し話を聞く。するとリチャードは3人は確かに自分の犯行だが、4人目は違うという。自分の作品である3人の殺人を冒涜されたので自首したと話す。事件を掘り返すジェッシイに不可解な妨害が起きたり、動機のある人物が浮上してくるが、はたして犯人は。
名優ネッドの名演技も見逃せない。輝くような美少女ジェニイ(マッケンジー・フォイ)も初々しく可愛らしい。
◎一級品のハードボイルド・サスペンス・ドラマ。トム・セレック入魂の作品。
ハードボイルド小説の巨匠ロバート・B・パーカー作「警察署長ジェッシイ・ストーン」シリーズの原作に魅了されたトム・セレックが、主演、製作総指揮も行っている。
主演のトム・セレックがいい。主人公ジェッシイ・ストーン、人生にくたびれて、アルコールが手放せない武骨な大男だが根は実直で心優しい。そんな彼も、圧力をかけてくる者や虚栄を張る者に対しては一転、抜け目のない反骨精神を内に秘めて反撃を開始する。重厚で渋みのあるドラマに出来上がっている。全体に暗く重い場面が多いが、セリフ、場面展開が緻密に計算されていて、クライマックスまで無駄のない構成になっている。派手な謎解き、こじつけたような推理もなく、逆にもの静かなトーンが洗練された心理描写を際立たせている。
◎原作者ロバート・B・パーカーの訃報を知って。
2010年1月、本屋で原作者ロバート・B・パーカー追悼の全集が並んでいて訃報を知った。彼の本は一冊も読んでいないが、この警察署長ジェッシイ・ストーン シリーズでその原作もきっと魅力的だろうなと思っていた。そしてたまたま何気なく借りたビデオ「アパルーサの決闘」の硬派で重厚な世界に魅了された。特典映像でこれもロバート・B・パーカー原作だと知り、納得。
この映画もトム・セレックと同様に、エド・ハリスが原作にほれ込んで主演から監督、製作、脚本までを手がけたらしい。素晴らしい出来だ。原作者R・B・パーカーの死去は非常に残念だが、これからも原作の益々の映画化を期待したい。